湾岸協力会議諸国、水不足対策に1000億ドルを投資へ―これに呼応し、Toray Membrane Europeが最新の水処理技術を中東で展開

人口増と水質の悪化が、湾岸協力会議(GCC)諸国を水不足対策と将来の持続可能な水資源の確保のための巨額の投資に駆り立てている。Ventures Middle Eastの最近の報告によると、GCC諸国は、太陽エネルギーの利用を含めた淡水化技術の改善や、廃水処理と水リサイクルの最大限の活用のために、2011年から2016年にかけて水部門に1000億ドル(約7兆8000億円)を超える投資を予定している。

この投資の動きに呼応して、浄水と廃水処理の技術を専門とするヨーロッパの名高い企業――東レグループのToray Membrane Europe――が、中東地域での水質と使用環境に適合させた一連の新しい製品ラインを導入した。

Toray Membrane EuropeがPower + Water ME展示会で最新の水処理技術を披露へ:

2012年10月8日から10日にかけてアブダビのNational Exhibition Centerで開催されるPower + Water Middle East展示会において、Toray Membrane Europeは逆浸透、ナノ濾過、精密濾過(MF)、限外濾過(UF)などの最新の水処理技術を紹介する。このPower + Water Middle East展示会は、アブダビ水・電力庁(ADWEA)の協賛、アブダビ商工会議所(ADCCI)の特別協賛で開催されるもので、電力と水に関連した製品とサービスを紹介する湾岸地域随一の催しとなっている。

Toray Membrane Europeは、高性能の水処理膜全般を通じて専門技術をもつ数少ない企業のひとつで、同社中東支店のRolf Richard Keilゼネラル・マネージャー代理は「われわれが浄水および廃水処理技術で最も力を入れているのは省エネルギー、およびプラントの効率と性能だ」と述べている。

将来の水危機を見据えた湾岸諸国の投資戦略:

環境・水・砂漠研究のためのヨーロッパ・アラブ機構とヨルダン大学の共同研究によると、アラブ世界は、持続可能な水管理のための効果的な取組がなされず、農業用途の水の消費量を減らす方策がとられない状況がこのままつづけば、2025年ごろには水の危機に直面することになりそうだという。

そうしたなか、アラブ首長国連邦(UAE)は、水管理の方法を改善して水という乏しい高価な資源の高まりゆく需要を満たすべく、廃水処理・リサイクルのプロジェクトをいくつか計画してきた。また、アブダビ首長国は、Mirfaの発電・造水プラントの拡張にゴーサインを出したのにつづいて、水道ネットワークの給水能力を日量3000万ガロン以上増強しようとしている。

こうした事情について、アブダビ水・電力庁(ADWEA)のAbdulla Saif Al Nuaimi長官は次のように述べている。「水が中東・北アフリカ地域では最も乏しい資源であり、湾岸諸国が淡水化の造水量において世界のトップ10に名を連ねていることは、よく知られた事実である。現在、中東・北アフリカ地域の水の必要量の3分の2は淡水化でまかなっており、したがって、淡水化部門全般への投資を各国政府が新たな緊急かつ最優先課題としていることは、驚くにあたらない」

UAEではこのほか、アジュマーン、ラアス・アル・ハイマ、ウンム・アル・カイワイン、およびフジャイラの各首長国の電力と水を所轄する連邦電力・水庁(FEWA)が、アジュマーンにあるAl Zawrah逆浸透法海水淡水化プラントの前処理工程に初めてUFを導入する。このUFを使った工程により、日量1億1500万リットルの前処理済み海水が逆浸透膜システムに送り込まれることになる。

カタールも、廃水処理と浄水の両分野で処理能力を高めようとしている。そうした努力の一環として、カタールは独立系造水発電プロジェクトの全体を通して新たな技術の導入を検討している。そのうちの最大のものが、現在Ras Laffan工業団地で建設中のRas Girtasプロジェクトである。

いっぽう、オマーンの電気・水道公社は、淡水化プラントに何らかの障害等が起きたときにその危機を乗り切るため、マスカトに戦略的貯水施設を建設することを計画している。また、クウェートの電力・水省は同国のDohaに、日量5000万ガロンの造水能力のあるふたつの逆浸透法淡水化プラントを建設することにしている。

Power + Water ME 2012の意義:

GCC諸国の水問題について、Power + Water Middle Eastの展示会ディレクター、Anita Mathewsはこう述べている。「水部門は、世界で最も水が不足している国の部類にはいるGCC諸国にとって、大きな課題になっている。水不足と水の安全保障の問題は、いまやそれに対する取組がはじまっており、水資源に影響をおよぼす関連ファクターも明らかになりつつある」

今年で5回目の開催となるPower + Water Middle East 2012では、電力および水のさまざまな分野から開発業者、メーカー、バイヤー、およびサービス提供者が集まり、関連産業の製品や技術について話し合いや投資活動がおこなわれる。この展示会には、すでに25ヵ国の100社余りが、地域の発電、水、および原子力産業のネットワークづくりとソリューション提供をめざして展示を申し込んでいる。

なお、Power + Water Middle Eastの詳しい情報については下記URLを参照されたい。
www.powerandwaterme.com