インド・ハリヤーナー州、地下水を取水しないことを事業認証要件へ―インド事業者が直面する水問題

インドのパンジャブ州およびハリヤーナー州最高裁判が2012年7月16日、ディベロッパーが地下水を取水しないことを書面で合意しない限り、建設許可を与えないことを指示する声明をハリヤーナー州政府に送付した。同州政府は2012年7月31日までに、いかに水不足を解決し、そして、どのように地下水を取水する建設事業を停止させるかに関する裁判所の質問事項に対して回答しなければならない。

地下水取水禁止の方向へ

この判決によって、ニューデリー郊外に発展しつつあるグルガオン・マーネーサル複合施設や、最近10年間で急速な発展をみせる周辺の小規模都市などで、許可申請中の多くのプロジェクトに支障をきたす恐れがある。また、それ以上に今回の事例は、水関連の規制が州ごとに行われているインドにとって、工業用水の過剰使用に対する規制がいかに行われるかについて、他州の先例となる可能性がある。

工業用水として地下水が多く用いられる背景には、インドの水供給事情がある。インドでは自治体による水供給体制が整っておらず、安定的なの水供給が十分に保障されていない。また、インドの法律では、土地所有者がその区画の下にある水資源の所有権を併せ持ち、地下水をどのような目的で、どの程度取水できるかについて、拘束力のある規定は存在しない。そのため、事業者にとって井戸を掘ることが水を得るために最も一般的な手法となっている。一部の州や地域では、井戸の掘削が禁じられていることがあるが、自治体や州の規制当局による承認を得ることで、許可されることもある。

水処理技術普及の糸口となるか

そのいっぽうで事業者らは、現状が長期的に持続可能なシステムではないことを認識してきている。例えば、グルガオンの地下水位は、毎年1メートルから3メートル低下しているという。インド商工会議所連合会(FICCI)および米コロンビア大学による報告書によると、調査に回答した事業者の80%が廃水処理および再使用をすでに実施しているという。FICCIのRomit Sen氏は、「水質がそれほど重要でない用途へ廃水を再使用する経済的メリットを、産業界は認識している。事業者は水保全や帯水層の回復、廃水処理に関して、徐々に地域や政府と協力するようになりつつある」と述べている。また、インド政府は1991年より、工業用の共同廃水処理施設へ補助金を給付し、事業者が水質基準を満たすための費用を補助している。しかし、事業者や政府によるそれらの取り組みはかなり限定的であり、形式的なものが多いという。

経済財としての水

インド政府によって提出された2012年国家水政策案では、水の適切な料金設定や管理を行うため、水を経済財(economic good)として扱うことについて言及している。同政策案では、水資源管理のための国家的な枠組みの構築を模索しており、それによって農業、工業、そして都市開発などの経済開発を利用可能な水の範囲で計画することが可能になる。同政策の承認時期は定かではないが、すでに政策案に基づいた水の適切な料金設定、効率的使用のための税の優遇措置、そして水供給・管理のための官民パートナーシップもしくは民営化の複数のモデルについての協議が行われている。

URL:FICCIおよびコロンビア大学による報告書
http://www.ficci.com/SPdocument/20138/Water-Risk-in-Indian-Industry.pdf
URL:2012年国家水政策案
http://mowr.gov.in/writereaddata/linkimages/DraftNWP2012_English9353289094.pdf