ベトナムでは工業団地の約4割に廃水処理施設がなく、環境汚染と健康被害を増長―厳罰化や関連法令の修正を政府は進める

2012年7月30日にホーチミン市で開催された全国の工業団地における集中廃水処理施設に関するセミナーで、公安省環境犯罪防止警察総局(以下、C19 という)の局長Nguyen Xuan Ly氏が講演を行なった。それによると、2012年6月時点で全国232ヶ所の工業団地で工場が操業し、毎日100万m3以上の廃水が排出されているが、廃水処理施設が整備されている工業団地がそれらのうち143ヶ所で約61%に過ぎず、残り(38%以上)の工業団地にはまだ集中廃水処理施設がないという。

同氏によると、これらの工業団地は、全国の工業生産高の40%を占め、輸出製品の60%以上がそこで生産され、200万人の雇用を創出し、外国からの生産技術が移転促進されるなど、大きな貢献をしているという。しかし、そうした部分的な恩恵のために環境問題を無視して工業団地への誘致を促進している地方が多く、その結果、環境汚染や住民の健康への影響などの問題が発生していると指摘している。

また、有害廃棄物の処理事業が極めて収益性の高い分野であるため、全国の多くの工業団地では有害廃棄物を競争して売買しているという現実が存在しているとも同氏は指摘した。実際、台湾から有害廃棄物や廃棄油を輸入した企業もあり、工業団地内の従業員や周辺住民の間で呼吸器、消火器、心臓に関する病気に罹っている人の数が増えているという。そのほかに、工業団地の開発が拡大してきたことで農地の面積が少なくなるとともに、工業団地からの廃水の影響を受けている河川の水質が悪化している。

悪質な排水例:

いっぽう、Dong Nai省環境警察部の副部長によると、同省内では1200軒の工場が操業しているが、そのうち、時代遅れの技術で廃水を適切に処理していないところが多いという。例えば、廃水を消火用水タンクにポンプで汲み上げてから工場周辺の敷地に排出したり、井戸に入れて冷水と混ぜ込んでから環境に排出したり、地下に油圧ポンプで注入したり、降雨の際に排出するなど様々な犯罪行為が見られる。

法令違反への厳罰化:

上述のC19の局長によると、行政違反処理法が来年2013年7月1日から発効し、環境分野の違反の罰金最高額が現行の5億ドン(約191.5万円)から20億ドン(約766.2万円)に上がるという。さらに、公安省は現在、天然資源・環境省と連携して2005年の環境保護法を修正するとともに、2013年3月に公布予定のベトナム環境警察法令を立案している。