ドバイで、空気中の水分から飲み水を得る風力タービンの実証試験

アラブ首長国連邦のドバイで、沖合の人工島群での利用を視野に、風力タービンを使って空気中の水分から飲み水を得る実証試験が実施される。これは2年計画のテストで、フランスのEole Waterが開発した装置を使い、建設中の巨大人工島群「ウォーターフロント」のなかの、Emirates Marine Environmental Group(EMEG)という環境NPOが所有する島で、2012年内に開始されることになっている。

これについて、EMEGのAmie Lenkowiecプロジェクト・マネージャーはこう述べている。「テストがすべてうまくいけば、ぜひとも装置を購入して常設の施設として使っていきたい。これはじつにすばらしいアイディアで、飲み水が手にはいらない他の島でも使えると思う」

実証試験の費用は装置の制作費やタービンのメンテナンス費用も含めておよそ670万UAEディルハム(約1億4000万円)で、これはEole Waterが全額負担する。「実証試験ではおもに、タービンが正しく動作することの確認をおこなう」とLenkowiecプロジェクト・マネージャーは言い、さらに、EMEGは協力の見返りとして、テストで得られた水をもらってオフィスで使うことを明らかにした。

1時間に100リットルの造水能力:

この風力タービンは高さ24メートルの支柱に取り付けられ、ローターの直径は13メートルである。ローターの回転によって空気ごと取り込まれた水分は、まず加熱されて水蒸気になり、つぎに凝縮される。凝縮水は支柱のなかで濾過され、こうして飲み水が得られる。

Eole WaterのMarc Parent CEOが示した試算では、この装置は1時間に平均100リットルの水を空気中から取り出すことができる。これについてParent CEOはこう述べている。「これは、アラブ首長国連邦における水へのアクセスの問題を根本から解決するものだ。このプロジェクトには、人工島群「ザ・ワールド」のいくつもの島からたくさんの引き合いがきている。島はみんな水に囲まれているが、飲める水は一滴もないからだ」

エネルギー自給型:

Eole Waterがアラブ首長国連邦でこの実証試験をおこなうのは、これが2回目である。最初のテストは、2011年10月から2012年3月にかけてアブダビのMussaffahで実施された。Eole Waterが22万5000 UAEディルハム(約479万円)をかけて実施したこの1回目のテストでは、1時間平均で約6リットルの造水に成功した。

この最初のテストでは、装置は電力網に接続されていた。しかし、これから実施する2回目のテストでは、装置は電力網からの電力供給をうけない。凝縮と濾過のシステムを駆動するのは、風力タービンと1枚の太陽光発電パネルである。

これがうまくいくかどうかについて、Parent CEOはほとんど心配していないとした上で、つぎのように述べている。「システム本体はすでにアブダビでテストした。技術的には何ら問題ない。風力タービンと太陽光パネルはきわめてありふれたもので、そうしたものを使うからといって大きな変更にはならない」

塩分と砂という悪条件のもとでテスト:

Parent CEOは、テストの実施場所としてアラブ首長国連邦を選んだのは単にこの地域で多くの顧客が見込めるからだけではないとし、こう述べている。「ここは厳しい環境だ。空気中に塩分も多いし、砂粒もたくさん混じっている。こうした悪条件のもとでうまくいけば、どこででもうまくいく」

EMEGの創立者で現在会長を務めているAli Al Suweidiは、この技術はアラブ首長国連邦にとって大きな可能性を秘めているという。同会長はこう述べている。「これはこの国にとってきわめて特別なものであり、空気中の水分から飲み水を得るというアイディアはきわめて革新的だ。われわれはこの実験の結果を、関心をもって見ていくつもりだ」