2012年10月19日、国際会計コンサルティング会社KPMGはそのSustainable Insightレポートの中で、大企業が拡大する水不足問題に如何に対応しようとしているのかを分析した結果を示した。それによれば、世界的大企業の多くが長期的な水に対する戦略を備えていないことが明らかになった。
この調査は、世界34カ国における世界でトップ250にランクされる企業を対象に、企業が発行する企業責任報告書(corporate responsibility report)の内容を分析した結果をまとめたものである。
調査結果の中で注目すべき事項としては次のようなものである。
- 調査対象の世界的大企業250社の60%は、自社の報告書の中で水問題を取上げてはいても世界の水不足問題に取組むための長期的戦略を策定していないのである。
- 企業責任報告書を発行している企業の中で、水使用量を削減するなどの具体的な計画を示した企業数の割合で見るとき、最も高いのがインドの95%であり、英国も66%と高かった。スペインやブラジルも高かった。一方で、中国でのそうした取り組みを示した企業の割合は24%であり、日本もそれについで27%と低く、米国やカナダも同様であった。
- 対象企業250社の中で自社の報告書自体に水問題を掲げている企業は76%である。また、自社の全事業部門でのウォーター・フットプリントの実態を報告している企業は3分の1程度あった。しかし、サプライチェーンにまで言及して、彼らのウォーター・フットプリントの実態を報告したものはごく一部であり、サプライチェーン全体のウォーター・フットプリントの実態を報告した企業は皆無であった。
こうした結果に関連してKPMG英国の気候変動&サステナビリティ部門長のVincent Neate氏は次のように語っている。
- まだ長期的な戦略を立てていない企業でも、公衆や投資家からこの水問題に対応すべきとの要求が高まってきている傾向にある。しかし、多くの企業が依然として、長期的な視点から水利用の抑制に向けて戦略的な計画を立て関係部門や社内外の関係者と話合ってゆくことの重要性を認識していないのが実情だ。
- 投資家自身、水に関するリスクに対して、また企業のポートフォリオ戦略の中に水不足問題が取上げられていくことに関心が高まってきており、一方で、その長期的な戦略の中に水不足対策などを打ち立てている企業を探そうとする傾向にある。
- サプライチェーンに係わる水関連リスクを適切に把握していなければ大きな経営リスクを伴う。2011年のタイでの洪水では、コンピュータ機器や自動車部品を製造する400社以上のサプライヤーの生産設備が麻痺してしまったことは記憶に新しい。