EPA水担当高官、物的・人的資源の減少、インフラの老朽化、気候変動などが安全な飲料水の供給持続の課題と指摘

米国環境保護庁(EPA)のNancy Stoner水質担当次官補代理は2012年10月16日、州飲料水管理官協会(Association of State Drinking Water Administrators)の年次大会で、物的・人的資源の減少、インフラの老朽化、気候変動の影響、そして水関係要員の退職による技術的専門知識の喪失さえもが、今後10~50年にわたって安全な飲料水の供給を持続するための課題となると述べた。

Stoner次官補代理の発言の概要は次のとおりである。

  • 米国の人口は2000~2050年の間に55 %増加すると見込まれているので、水資源の必要性はさらに増える。しかし近年、新しい水源を見つけることは非常に難しく、人口が増え、干ばつに直面する流域の数が増えているので、今後も新たな水源の確保が容易になることはなさそうである。
  • EPAの分析では、今後20年間に、廃水のインフラに3000億ドル(約23兆8000億円)、また飲料水のインフラに3350億ドル(約26兆5000億円)が必要になる。
  • 水源の水質が悪化している。我々は、栄養素汚染とそれが環境問題と公衆衛生問題に与える影響に重点的に取り組んでいる。飲料水の安全を保証するには、処理プロセスにさらに資金を投じる必要がある。
  • 米国はまた、従来とは少し異なる汚染物質、すなわち、古くからある油膜や有害廃棄物だけでなく、科学の進歩によって検出できるようになった新しい汚染物質という課題にも直面している。
  • こうした問題に対処するため、EPAは、水質浄化法(CWA)と安全飲料水法(SDWA)の両方が最大限に生かされ、より役立つように、両方の法律の関係条項を特定し、統合することを検討している。
  • 汚染物質や処理を含めた水の「中身」についての消費者の認識は高まっている。社会が円滑に機能するためにはクリーンな水が重要であることをコミュニティに教え続けてゆくことが重要である。
  • EPAは、引き続き農務省、米国農業後継者連盟(Future Farmers of America)、全米保護区協会(National Association of Conservation Districts)などとの協力関係を維持し、安全飲料水基金を使って飲料水源を保護するための自発的な対策に着手することを奨励する。
  • EPAの取り組みの1つに、2011年1月にスタートした地域の水技術革新クラスター(Water Technology Innovation Cluster)がある。これには、地元コミュニティの水質を改善する環境技術を開発するためにオハイオ州南西部、インディアナ州南東部、およびケンタッキー州北部が参加している。このイニシアチブの目的は、環境や公衆衛生の課題を解決する革新的な技術を企業が商品化するのに役立つことである。
  • EPAが調査しているもうひとつの領域が、水とエネルギーの結びつきである。水とエネルギーの消費の相互依存度は極めて高いため、米国にある約5万5000カ所の水道施設と1万6000カ所の下水処理場は、重要な節約の機会を提供している。ゆえに、EPAは、こうした施設がどうすればエネルギー消費量を削減して、インフラなどそのほかのプロジェクトに使える可能性がある資金を節約することができるかを理解するための計画立案を支援している。
  • 最後に、今後数年間で何千人もの職員が退職するとみられており、その結果、多くの専門的が失われる。このため、EPAなどは水関係の要員の育成に取り組まなければならない。

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