米EPA、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定

米環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)は2020年6月18日、安全飲料水法(SDWA:Safe Drinking Water Act)に基づく飲料水汚染の規制対象に過塩素酸塩は該当しないことから、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定した。同庁が2011年に決定した飲料水中の過塩素酸塩を規制する取組みは撤回される。

EPAは2011年以降、州政府や公共水道事業者とともに、最新の利用可能な科学を利用したり積極的な対策を講じたりして飲料水中の過塩素酸塩レベルの低減に取り組んできた。そうした取組を検討した結果、過塩素酸塩はSDWAの下で規制対象とするほど公衆の健康へ影響を及ぼす懸念は見られないと結論付けた。さらに、EPAは最近、同庁科学諮問委員会(EPA Science Advisory Board)の勧告に基づき、飲料水中の過塩素酸塩が公衆の健康へ与える影響を新たに分析した。その結果、健康への影響が懸念される濃度レベルは、2011年に考えられていたレベルより高いことが判明した。

EPAのAndrew Wheeler長官は、「今回の決定は、科学的根拠や地域での実例に基づいており、米国民に対して繁雑で過度な規制を緩和するというトランプ大統領の意向を反映している。各州や地域に位置する上水道システムでは、飲料水中の過塩素酸塩の水準は効果的且つ効率的に管理されている」と述べた。

今回のEPAの発表を受けて、水道事業者は飲料水中の過塩素酸塩の規制は不要であると主張している。また、Aerojet Rocketdyne、American Pacific Corp、Lockheed Martin Corp、Northrop Grumman Corpが加盟する業界団体Perchlorate Information Bureauも、EPAの決定に賛同している。一方、環境保護支持者は、健康への影響を把握している化学物質を規制しないという同庁の決定に懸念を示している。

過塩素酸塩は、特に米国南西部の乾燥地域では自然界にも存在する化学物質で、ロケット燃料、爆薬、自動車用緊急保安炎筒、および花火の製造に使われている。また、浄水場では水道水の消毒として使用されている次亜塩素酸塩溶液や、硝酸塩肥料等の製造に活用される硫酸塩の中に不純物として混入しており、健康被害が懸念されてきた。

そのためEPAは2011年2月、SDWAに基づき汚染物質として飲料水中の過塩素酸塩を規制する判断を下した。その後、EPAは規制化を進めてきたものの、2016年には過塩素酸塩の飲料水基準の提案と最終決定が遅延しているとして環境保護団体Natural Resources Defense Council(NRDC)から提訴された。その結果、EPAは2019年12月19日までに飲料水基準(規則)を策定することに合意し、その後、その期限が2020年6月19日まで延期された。

EPAは2019年6月に過塩素酸塩の飲料水基準(規則)案を発表し、飲料水中における過塩素酸塩の最大汚染レベル(MCL:Maximum Contaminant Level)及び最大許容濃度目標(MCLG:Maximum Contaminant Level Goal)を1リットル当たり56マイクログラム(0.056 mg/L)とした。同規制案に対するパグリックコメントが2019年8月26日まで募集され、寄せられた意見を踏まえた最終規制が2020年6月中に発表される見込みであった。

なお、NRDCは、今回のEPAの決断に対して、2016年の合意内容に違反しているとし、EPAを提訴する構えを見せている。

飲料水中の過塩素酸塩規制に関する詳細な情報は、以下のウェブページで読むことができる。
https://www.epa.gov/sdwa/perchlorate-drinking-water

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