カリフォルニア州モントレー半島地域水道公社の海水淡水化プロジェクトをめぐる動向-81

カリフォルニア州のモントレー半島地域水道公社(MPRWA)は現在、海水淡水化事業を進めようとしており、これについて3件のプロジェクトが提案されている。MPRWAは、提案されているこれら3件のプロジェクトについて、独立した第三者による公平な評価をくだすため、それを委託するコンサルタントを募集していたが、第1回の公募では締切日までに応募する業者がいなかった。MPRWAが提案依頼書(RFP)を送ったコンサルティング会社12社に聞き取り調査をしたところ、そのうち7社が、利益相反を理由に応募を見送ったことがわかった。

その後、MPRWAはコンサルティング会社4社を対象に、非公式に第2ラウンドの提案募集をおこない、その結果、MPRWAの技術諮問委員会(TAC)が、カリフォルニア州カールスバッドに本社を置くSeparation Processes, Inc.(SPI)におよそ6万ドル(約480万円)で評価を依頼するよう勧告した。

3プロジェクトを比較して評価:

まだ正式なものではないが、MPRWAとSPIとの契約には、提案されている3件のプロジェクトのそれぞれについての、総資本コスト、年間運転コストと水の単価、および各プロジェクトの提案企業が試算に用いた計算方法の比較・評価が含まれることになる。プロジェクト間のコスト比較は、MPRWAに納入される水の年間造水能力が5500エーカー・フィートの場合と9000エーカー・フィートの場合についておこなわれる。
今回の比較・評価の対象となる3件のプロジェクトの提案企業は以下のとおりである。

  • California American Water (CalAm)
  • DeepWater Desal
  • People’s Moss Landing Desal

比較・評価の結果は、2012年8月中に報告書としてまとめなければならない。カリフォルニア州公益事業委員会に対するMPRWAの証言の期日が迫っており、それまでに報告内容を検討するじゅうぶんな時間が必要だからである。
PMRWAは、現在の水供給システムにかわる代替ソリューションを2016年までに実施していなければならない。現在の水源であるカーメル川からの取水が、州の差し止め命令により大幅な削減を余儀なくされるからである。

さらに2件の事前資格審査要請:

モントレー半島地域の6市の共同事業体であるMPRWAは、この件に関連してさらに2件の事前資格審査要請(RFQ)をおこなった。資格審査申請の締切はいずれも2012年8月19日の週内である。第1のRFQは法律事務所および個人に向けたもので、MPRWAが代替水供給プロジェクトの開発に着手するにあたって向こう2年間の法務サービスを求めている。この件についての申請の期限は8月24日となっている。
第2のRFQは、MPRWAの理事の募集である。このRFQの応募締切は8月23日である。

予想外のリスク評価結果が教えるもの:

MPRWAの技術諮問委員会(TAC)は、8月20日の午後に会合をひらき、3件のプロジェクト案に関する独自の「淡水化プロジェクト・リスク評価」について検討した。
TACは以前に、プロジェクトを提案している3社に対し、それぞれ56項目から成る質問状を送り、回答を求めた。その回答にもとづき、TACは技術的な事項、スケジュール、および関係するコミュニティ地域というカテゴリーに問題を切り分け、それぞれ別個のリスク評価をおこなった。

その結果、スケジュールの遅延を引き起こすリスクが比較的高い要因として13項目が挙げられ、各プロジェクトのその13項目について、TACの6人の委員がそれぞれ1点から5点までの評点で評価づけをおこなった。1点はその項目のリスクがきわめて高いことを意味し、5点はリスクが比較的低いか、あるいは通常程度であることを意味している。評価の結果は、TACの各委員の名前を伏せて集計され、表にまとめられた。
その集計結果では、People’s Moss Landing Desalが提案しているプロジェクトが最高ランクを獲得し、DeepWater Desalのプロジェクトが2位、CalAmのプロジェクトが3位だった。これは意外な結果である。CalAmが提案しているプロジェクトは3つのうちで最も明確に提示されているように見え、最も経験を積んだスタッフが関与し、環境影響報告(EIR)の手続きを最初の段階からはじめなくても済みそうな唯一の案だと考えられてきたからである。

これについて委員別の採点内容を見ると、あることが浮かび上がってくる。委員によっては、海水淡水化一般についてのじゅうぶんな知識がないか、あるいはカリフォルニア州における海水淡水化の知識がないか、またはこの地方の政治力学に左右されているかのいずれかでないかぎり、その採点内容の説明がつかないひとがいるということである。

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