サンパウロ州裁判所は2012年10月4日、検察当局による起訴処分の要求を受理し、サンパウロ州基礎衛生公社(Sabesp)および米州開発銀行(IDB)に対し、下水の不適切な処理でTietê川を汚染したとして114億レアル(約4480億円)の支払いを要求することが明らかになった。そのうち、汚染された流域の環境を修復するための費用として、44億レアル(約1730億円)が当てられる。同河川の流域は、サンパウロ市に飲料水を提供している2つの巨大な貯水池の水源となっている。
環境破壊、水力発電にも支障
訴訟では、Sabespは2018年末まで契約を交わしている自治体に対して、適切な下水処理をすぐに実施することが要求される。サンパウロ市検察当局によると、Sabespは適切な下水処理プラントを有しておらず、プロジェクトは20年も遅れをとっているという。罰金の44億レアルは、Tietê川流域の動植物や水質に及ぼした損害の修復に用いられ、そのようなプロジェクトを実施すれば、自然環境は修復可能であると見込まれている。
環境修復の費用に加え、1992年以降、流域の水質が原因となって州の水力発電ダムで河川水が使用不可能になり、75%まで発電率が低下したことによる損害に対して、70億レアル(約2750億円)が要求される。ブラジルの憲法では、汚染水をダムの発電に用いることが禁止されている。Sabespは2012年10月15日に発表した声明で、「訴訟についてまだ通告されていないが、通告を受けた際には必要な情報提供を行い、州検察に協力する」としている。もし、検察当局が訴訟に勝利した場合、44億レアルは環境修復のための州の特別基金で使用され、70億レアルは州の財務省にて運用される。
融資機関も責任を共有
1992年よりSabespはTietê川上流域における下水処理に、主にIDBの融資を利用して32億レアルを投資してきており、2015年までにはさらに36億円を投入する計画である。2020年までに下水処理設備更新の第1フェーズが終了することが見込まれている。Sabespはブラジル最大の水事業者であり、サンパウロの都市人口の60%、そして645自治体のうちの56%に上下水道サービスを提供している。
ワシントンに本部を置く国際開発金融機関で、ラテンアメリカやカリブ諸国における開発プロジェクトに対する融資を行うIDBは、1992年に建設した下水処理プラントを含め、Sabespのプロジェクトに融資を行ってきた。環境破壊をした企業に融資したとして、その環境破壊に法的な責任を負うとの判断が想定されている。