グラフェン・ベースのナノコンポジットで水中の汚染物質を吸着

イランの研究者らのグループが、酸化セリウムと酸化チタンを結合させたCeO2-TiO2という構造をもつナノ粒子を合成し、それとグラフェンとでナノコンポジットを形成させることで、サイズは小さいが表面積は大きく、したがって汚染物質を吸着する活性部位の多い粒子をつくることに成功した。この成果は、Journal of Hazardous Materials上でAssembly of CeO2-TiO2 nanoparticles prepared in room temperature ionic liquid on graphene nanosheets for photocatalytic degradation of pollutants(汚染物質の光触媒分解のために室温イオン液体中でグラフェン・ナノシート上につくられるCeO2-TiO2ナノ粒子の作製)というタイトルの論文として発表された。

酸化チタンを光触媒として汚染物質を分解

半導体光触媒のなかでも、酸化チタン(TiO2)は光学的安定性にすぐれ、毒性もないため、多くの用途に向いた有望な材料と考えられている。しかし、これには、可視光線の照射では機能しないという難点がある。バンド・ギャップ・エネルギーが紫外線領域にあるからである。

イランのシャリーフ工科大学、Mohaghegh Ardabili大学、およびナノサイエンス・ナノテクノロジー研究所のメンバーらの研究では、TiO2をカーボン・ベースのTiO2/CeO2ナノコンポジットとして組み込むことで、このバンド・ギャップ・エネルギーを長波長側にシフトさせることが試みられた。また、研究グループのもうひとつの狙いは、TiO2の光触媒活性を増すことにあった。

実験の結果、電解液中でTiO2を合成し、それに酸化セリウムを加えると、粒子の大きさが減少し、表面積が増え、それとともに高温における鋭錘石からルチルへの相交換の速度が落ちて、結果として熱安定性の高いナノ粒子が形成されることがわかった。また、このナノコンポジットが汚染物質の分解に際して示す高度の活性は、グラフェンというユニークな構造によって説明することができる。グラフェンが、触媒表面における吸着を促進し、イオン担体の再合成の頻度を低下させているのである。

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