カリフォルニア州カールスバッドで提案されていた海水淡水化プラントの建設が、ここにきてようやく軌道に乗った。2012年11月29日、サンディエゴ郡水道公社(SDCWA)理事会が、カールスバッド淡水化プラントの建設・運営主体であるPoseidon Resourcesから向こう30年にわたり日量18万9250立方メートルの水を購入する水売買契約(WPA)を、圧倒的多数の賛成で承認したのである。
翌11月30日には地区控訴裁判所が、淡水化プラント建設に必要なNPDES許可(全国汚染物質排出防止制度(NPDES)にもとづく許可)が水法の要求条件を満たしていないとするサーフライダー・ファウンデーションの主張をしりぞけた。裁判所は、サンディエゴ地区水質管理委員会がPoseidonにNPDES許可をあたえる際に、隣接するエンシナ発電所が閉鎖される場合には改めてNPDES許可を取得し、必要となる追加的な汚染軽減措置を講じるという条件をつけているので問題はないという判断をくだしたのである。これによって、このプロジェクトをめぐる14回目にして最後の訴訟が終結した。
11月30日にはまた、カリフォルニア州公害防止金融公社(CPCFA)がPoseidonに対し、プロジェクトの資金調達のための8億4000万ドル(約740億円)までの社債発行を認めた。Poseidonは数週間以内に社債の販売を開始し、その後あまり時を経ずにプラントの建設を開始するとしている。
プラントの建設にはKiewit InfrastructureとJF Shea Constructionとの共同事業体があたる。また、設計と運転はIDE Technologiesが担当する。運転開始は2016年の予定である。
水の売買価格
Poseidonとサンディエゴ郡水道公社とのあいだで結ばれた水売買契約(WPA)では、淡水化された水は公社の既設の――管路の一部や浄水プラントをこれに合わせてグレードアップした――水道施設に送られることになっており、当初の価格は1エーカー・フィート(AF)あたり2040ドル~2288ドル(約18万円~20万2000円)、1立方メートルあたりに換算すると1.65ドル~1.86ドル(約145円~164円)に設定されている。水価格は、この幅のなかで年間購入量によって決まる。また、水価格の見直しは、物価変動と、あらかじめ契約書に明記された状況の変化があった場合にのみなされることになっている。
価格算定の根拠のひとつとなる社債の最終利率がまだ確定していないため、水道公社は、プロジェクト資金のうち社債の部分について、最高利率を6.1%に設定することを提案した。これは現在の市場利率よりも1.0%高い。下に示す表は、社債の利率を設定最高利率と現在の市場利率のちょうど中間の5.60%として計算した水価格の内訳である。
表中で、費用は固定費用と変動費用に分けて示している。固定費用はPoseidonが造水をおこなう場合に量にかかわりなく発生する費用であり、変動費用は実際に水道公社に納入される水の量に応じて発生する費用である。
社債利率5.60% | ||
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水単価の内訳 | 4万8000 AF/年 (16万2218 m3/日) |
5万6000 AF/年 (18万9250 m3/日) |
固定費用 $/AF($/ m3) | ||
負債償還費用 | $551($0.45) | $472($0.38) |
エクィティ・リターン費用 | $280($0.23) | $240($0.19) |
管路敷設費 | $238($0.19) | $204($0.17) |
固定運営費 | $400($0.32) | $343($0.28) |
固定電力料金 | $73($0.06) | $63($0.05) |
固定費用小計 | $1542($1.25) | $1322($1.07) |
変動費用 $/AF($/ m3) | ||
変動運営費 | $101($0.08) | $101($0.08) |
変動電気料金 | $442($0.36) | $442($0.36) |
Poseidonの管理費用 | $10($0.01) | $10($0.01) |
変動費用小計 | $553($0.45) | $553($0.45) |
水の単価 | $2095($1.70) | $1875($.52) |
その他、水道公社が負担する費用 | $193($0.16) | $165($0.13) |
水購入の総費用 | $2288($1.86) | $2040($1.65) |
水道公社の購入量が4万8000エーカー・フィートに満たない年があったときは、それが不可抗力などのやむをえない理由による場合のほかは、固定費用を反映したかたちで公社が不足分を支払うことになっている。
また、プラントの建設工事の段階で、水道サービスのコスト・スタディがおこなわれ、淡水化された水に関連する費用を水道料金などにどのように反映させるかが決められることになっている。一般の水道利用者には月に5ドル(約440円)ないし7ドル(約620円)の料金値上げになる見込みである。