サウジの大学、MITと共同で石油・ガス井の水処理用新システムを開発――途上国での淡水化にも応用可

サウジアラビアのキング・ファハド石油・鉱物大学(KFUPM)とアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究で、天然ガス井からガスとともに出る水を浄化する最新のシステムが開発された。このシステムはエネルギー効率がよく、途上国での淡水化への活用が期待されている。
KFUPMの中核的研究拠点――Center of Research Excellence――のAmr Al-Qutub所長はこのシステムについて、これは加湿・除湿(HDH)プロセスを利用した新しいシステムで、温室効果ガスの排出削減のために天然ガスの使用が増えているなか、きわめて意味が大きいとして、つぎのように述べている。「石油・ガス井から出てくる水は、塩分が高い上に石油と混ざり合っている。われわれが開発したこの新しい技術は、こうした水の浄化にすぐれたソリューションをもたらすものだ」

淡水化に応用して飲み水の供給も

Amr Al-Qutub所長は、この新技術を応用した淡水化事業を営む会社を設立する計画があることを明らかにした。「これは、この種の技術を事業化する会社としてはサウジアラビアで初めてのものになる」と同所長は言う。この新しいシステムは、一般家庭や住宅地域にじゅうぶんな飲み水を供給する一助となるだろう。1基のタンクに複数の淡水化装置を取り付けることができ、各淡水化装置には日量3000リットルから4000リットルの造水能力がある。

すぐれた効率で途上国向き

このシステムの開発チームには、KFUPMの研究者らのほかに、MITのPrakash Narayanや、John H. Lienhard V機械工学教授などが参加している。
チームが考え出した方法は、通常の蒸留のプロセス――塩分を含む水をいったん蒸発させ、次に低温物体の表面上に凝縮させることによって、蒸発の過程で塩分を取り除く方法――に手を加えたものだ。通常の蒸留プロセスでは、凝縮表面を低温に保ちつつ原水を沸点まで加熱する必要があるため、大量のエネルギーを消費し、したがって造水コストが高い。
これに対し、開発チームが考え出した新しいプロセスでは、沸点をかなり下回る温度の水が、キャリア・ガスと直接接触することによって蒸発する。こうして加湿された空気は、つぎに冷却水のなかを泡状になって通過するうちに水分が凝縮して純粋な水になる。
このプロセスでは、暖水と冷水との温度差が従来のプロセスと比べてずっと小さく、また、小さな泡の総表面積が復水器の平坦な面の面積に比べてずっと大きいため、従来プロセスより効率がよい。
これについて、Lienhard教授はこう述べている。「われわれは、KFUPMと共同研究をはじめた当初から、途上国の上水道のない地域に水を供給する手段としてのHDHプロセスに注目してきた。MITもKFUPMのみなさんも、世界中のひとびとの役に立つ技術を開発したいと考えたのだ」

小規模淡水化プラントに最適

MITの若手研究者Narayanは、博士論文のテーマに選んだこの研究をはじめるにあたって、淡水化プラントの「エネルギー効率と熱効率を上げ、サイズとコストを下げる」ことに主眼を置いた。そのような淡水化プラントは、たとえばインド南部のような、淡水は不足しているが海水は豊富な発展途上の地域での必要性がきわめて高い。
従来の淡水化プラントは、規模が大きいほど効率がよく、費用対効果性が高い。しかし、HDHシステムの場合は、最適なプラント規模は日量約1200リットルから2400リットルで、これはおよそ、農村部のひとつの村落が必要とする水の量に匹敵する。また、HDHシステムによるプラントは、モジュールを追加するだけで大きくしていくことができるとNarayanは言う。
このシステムについて、マサチューセッツ州ウィンチェスターのIDA淡水化アカデミーのLeon Awerbuch校長はこう述べている。「これは、従来のHDHよりもずっと効率のよいソリューションにつながるきわめてユニークな研究で、中小のシステムによる淡水化に大きな影響をおよぼす可能性がある」

エネルギーと水の分野での両大学の協力

MITの機械工学科と、ダーランにあるKFUPMとのあいだでは、期間7年の共同研究・教育プログラムがはじまっており、太陽エネルギー、海水淡水化など、水と低炭素エネルギー関連の技術がその中心テーマとなる。KFUPMの中核的研究拠点では、7年間に16件の共同研究プロジェクトと8件の共同教育プロジェクトが実施されることになっている。これら共同プロジェクトの資金はKFUPMが提供する。

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