低炭素経済への移行を加速するためにイギリス政府が設立した独立企業、Carbon Trustは2013年2月19日、企業による節水の取組を認証する「世界初」の国際規格と銘打ったWater Standardを開始した。
Carbon Trustは、世界の企業は「気候変動対策への取組において迅速性に欠けている」し、枯渇しつつある資源の節約においても同様だと考えている。水資源について言えば、国際金融公社(IFC)のWater Resources Groupが述べているように、「2030年には、水の必要量と利用可能な安全な水の供給量とのギャップは40%にひろがるおそれ」がある。
それにもかかわらず、Carbon Trustがイギリス、アメリカ、中国、韓国、およびブラジルの「大企業」の幹部475人を対象に実施した調査では、節水目標を定めてそれに向かった取組を実施していると答えたのは7人にひとりにすぎなかった。
節水を企業の優先課題の上位に
Carbon TrustのWater Standardは、「水の使用量の測定、管理、削減に関する企業の行動を大きく変えるための触媒になる」ことを目的としてはじめられたもので、「企業の持続可能性の評価基準と、投資家、ステークホルダー、および消費者から見たときのその評価の見えかたを根底から変える」ものとして期待されているWater Standardについて、Carbon TrustのTom Delayチーフ・エグゼクティブはこう述べている。「企業内部での節水の取組は、これまで多くの企業にとって、優先課題の上位に位置づけられることはなかった。しかし、将来の水不足という厳しい現実が、こうした状況を早急に変えていく必要があることを物語っている。われわれがWater Standardをはじめたのは、企業が水利用の監視と管理をおこない、資源効率を事業計画に組み入れるよう、後押しをするためだ」
認証の条件
- Carbon TrustのWater Standardの認証をうけるには、以下の条件を満たす必要がある。
- 上水道からの給水量、地表水および地下水の取水量、ならびに雨水の集水量を測定すること。
- 産業廃水として排出される水の量を測定すること。
- 総給水量と産業廃水量について、長期的な削減を明示すること。これは絶対量の削減であってもよいし、また、売上高や生産高との関係における水集約度の削減であってもよい。
- 水のガバナンス、測定、および管理についての質的評価(訪問調査を含む)において、100点満点中合格点である60点以上を達成すること。
WWF UKのコメント
環境保全団体WWF UKのDavid Nussbaum会長は、このWater Standardについて次のように述べている。「水資源は有限であり、ひとびとの健康と安全、また、環境にとって、水ほど基本的な資源はほかにない。増大する需要、拙劣な管理、それに気候変動が、全地球規模の水の課題を突きつけている。リスクを管理するために、組織は水の使用量を測定、管理、削減し、河川の流域全体にわたるよりよい水管理を促進するための行動を起こす必要がある。Carbon Trustが考案したこのような規格は、こうした行動を独立した厳格な認証という制度に結びつける道をひらくものだ。毎年、責任をもって水の使用量を前年より減らしていくことで、企業は水のスチュワードシップの向上をめざす道程を歩みはじめたことを示すことができる」
先行4社の節水の実績
Carbon TrustのWater Standardは、すでに4社――Coca Cola Enterprises(CCE)、Sainsbury’s、Sunlight、およびBranston――が自社のスキームとして採用し、それ以来、4社とも水使用量削減の実績を残していると伝えられている。
これら4社がこのスキームのもとで実施してきたのは、たとえば以下のようなことである。
- 生産ライン上で缶やボトルを移動させるのにドライ潤滑剤やセミドライ潤滑剤を使用するとともに、ボトルや缶の充填前のすすぎに水ではなく空気を使用する。(CCE)
- 雨水を利用する。(CCE)
- 水管理サービスの専門企業Waterscanと協力して、地下の漏水を根絶し、雨水を利用し、洗車用水の再生処理装置に投資する。(Sainsbury’s)
- 洗浄サイクルにおける水の使用量を減らし、使用した水の75%を再生処理、再利用する。(Sunlight)
- 膜バイオリアクター導入により、水道水の消費量を約60%削減する。(Branston)