ベトナム天然資源環境省の発表によると、国内で1日当たり平均24万m3もの工業団地由来の廃水が未処理のまま環境中に流れ出し、至るところで深刻な環境汚染の原因となっているという。このため環境に関する苦情や訴訟が毎日のように起きており、土地関連の問題に次いで2番目に注目を集めるトピックとなっている。
このような汚染問題は、高度発展時期における工業団地整備の結果と考えられている。最近20年の間に政府主導で作られた工業団地の数は、1991年にはわずかに1か所(ホーチミン市のTan Thuan工業団地)だけであったが、2012年末時点で289か所にまで増えた(そのうち運営されているのは179か所)。これに加え、工業小区の数も増加している。2012年末時点でベトナム全体に878の工業小区がある(そのうち運営されているのは614か所)。工業小区における環境保護関連のインフラ整備も未だ十分ではなく、集中廃水処理システムをもつ工業小区は全体の6.5%、わずか40か所だけである。
「2030年を視野に入れた2020年までの国家環境保護戦略に関する決定1216/QD-TTg号」によると、国内の環境保護のために約1100兆ベトナムドン(約5兆円)が必要であると試算されている。その内、工業団地廃水処理に必要な額は約276兆ベトナムドン(約1.3兆円)である。目標としては、2020年までに工業団地から排出される汚染物質の90%、そして工業小区から排出される汚染物質の30%を抑制することが掲げられている。
集中廃水処理システムを整備するも稼動されていない
国内の工業団地のうち全体の60%には集中廃水処理システムが設置されているが、運営管理コストが高いため、廃水を処理せずにそのまま環境中に排出する工業団地も少なくないのが現状である。2012年12月の時点では、179の工業団地のうち集中廃水処理システムを過去に作動させたことがあるまたは現在作動させている工業団地は143箇所だけであった。さらに、工業団地内のすべての工場に対して廃水収集設備を完備しているのは84箇所のみである。
また、工場用地の70~100%に工場が設置されているにも関わらず、いまだに集中廃水処理システムが整備されていない工業団地も多い。このような問題のある工業団地としては、例えばTra Noc、Thot Not(Can Tho市)、Tran Quoc Toan(Dong Thap省)、Vung Ang(Ha Tinh省)、Nam Cam(Nghe An省)等が挙げられている。
廃水の水質は基準値の2倍に達する
幾つかの省および市の工業団地からの廃水を測定・分析した結果、集中廃水処理システムのない工業団地からの廃水の水質は、18種類の項目すべてが基準値の2倍を超えていた。さらに、集中廃水処理システムが整備されている工業団地の場合でも、基準値を超えるケースが多く見られた。
環境中に流れ出る廃水を監視するために、工業団地に自動測定設備を設置する必要があるという意見もある。しかし、現在、そのような自動測定設備が整備されている工業団地は全体の10%にとどまる。工業団地内の工場の殆どは定期的に大気や騒音を測定しているが、高いコストと技術的な困難のために、実際にはあまり実施されていない。