サウジ、水プロジェクトに向こう10年で660億ドルを投入へ

サウジアラビア政府は、同国の急増する人口と急成長する産業にとって水が重要であるとの認識に立って、じゅうぶんな水供給を確保するために向こう10年間に660億ドル(約6兆6000億円)を投じる計画である。この10年計画の水プロジェクトは、国営水道会社(NWC)が所轄することになっている。
同国政府はすでに、2013年の上下水道プロジェクトに64億ドル(約6400億円)の予算を割り当てている。また、増大をつづける電力需要を満たすべく、発電所の建設も進めている。

SWCCが進める大規模海水淡水化と発電事業

サウジアラビアの海水淡水化公団(SWCC)は最近、ジェッダの北西のラービグに造水能力が日量60万立方メートルの世界最大の淡水化プラントを建設する計画を公表した。
これについて、SWCCで西部地域を統括するMuhammad Al-Thubaityは、「このプロジェクトの工事は2014年第1四半期に開始され、2018年に完了する」と語り、加えて、2013年の予算がこの巨額プロジェクトにもすでに割り当てられていると述べた。
ラービグに新設する淡水化プラントは逆浸透(RO)方式で、ジェッダ北部、メッカ、およびターイフに水を供給する。また、ラービグにある既設の淡水化プラントも、最近になって造水能力が日量2万立方メートルに増強され、Khaleesとラービグに飲用水を供給している。
SWCCは現在、世界の淡水化による造水量の約20.7%の水を生産しており、向こう15年間で造水能力を日量400万リットル増強したいとしている。現状のままでは、2025年までに水の需給ギャップがおよそ日量150万立方メートルに達するとSWCCは予測している。
サウジアラビアにおけるSWCCの役割は、海水を淡水化して沿岸部や内陸部の都市への飲用水の供給量を増やすことにある。SWCCはまた、サウジアラビア第2の発電事業者でもある。
SWCCには合わせて30のプラントがあり、それらで日量350万立方メートルの水を生産するとともに、500万キロワットの電力を供給している。SWCCのプラントは17の事業所にあり、そのうち14事業所は西海岸に、3事業所は東海岸に位置している。

民営のACWA Powerによる淡水化・発電プロジェクト

SWCCの淡水化・発電プラントに加えて、民営のACWA Power Internationalには4事業所と、2基の浮体構造物上に、合わせて7つのプラントがある。これらのプラントも淡水化により水を生産している。ACWA Powerはこれらプラントの開発、投資、共同所有、および運転をおこなっており、全体の発電量は1573万1000キロワット、造水量は日量240万立方メートルで、投資価値は230億ドル(約2兆2000億円)を超え、2300人あまりの従業員を擁している。
ACWA PowerのPaddy Padmanathan社長兼CEOによると、同社の陸上の淡水化プラントは、シュアイバに2基、シュケイク、ラービグ、およびジュバイルにそれぞれ1基ずつとなっている。
シュアイバにあるのは独立系造水発電プロジェクト(IWPP)の施設で、この施設はACWAも大株主として参画しているShuaibah Water and Electricity Co.(SWEC)が所有している。このIWPPは、国営の水・電力会社(WEC)によるこの種のプロジェクトとしては初めてのものであり、予算規模は24億5000万ドル(約2370億円)だった。シュアイバのIWPPは世界最大級の発電造水併設プラントで、アラビア重質原油を燃やして蒸気を発生させ、発電と、多段フラッシュ法淡水化による造水をおこなっている。
いっぽう、Rabigh Arabian Water and Electricity Co.(RAWEC)は、ラービグに独立系造水・蒸気発生・発電事業体(IWSPP)を所有している。これは、Petro Rabigh Co.(Saudi Aramcoと住友化学の合弁企業)に水、電力、および蒸気を供給する13億ドル(約1300億円)規模のプロジェクトで、この地域で最大の石油コンビナートを支えている。このプラントでは、発電と逆浸透淡水化のエネルギー源として重質燃料油を使用している。
シュアイバではまた、Shuaibah Expansion Project Co.(SEPCO)がシュアイバ独立系造水事業体(IWP)を管理している。この拡張プロジェクトには、逆浸透技術を用いた淡水化プラントが含まれている。逆浸透は、サウジアラビア西部地域の各所で水の供給量を増やすために急速に導入された技術である。
ジュバイルのMarafiq IWPPは、Jubail Water and Power Company(JWAP)が所有している。この33億6000万ドル(約3250億円)のプロジェクトは、ジュバイル工業都市の全体、および東部州の一部に水と電力を供給している。このIWPPプラントは、世界最大の発電・淡水化施設とされている。このプラントでは燃料として天然ガスを用い、複合サイクル発電技術と多段効用法淡水化技術とを組み合わせている。
ACWA Powerはまた、完全独立型の淡水化プラントを搭載した世界初の浮体構造物を開発した。この淡水化プラントには、発電機とスタッフの宿初施設も備わっている。2基の浮体構造物上の淡水化プラントはそれぞれ、日量2万5000立方メートルの造水能力をもつ。
これら浮体構造物は、当初はシュアイバIWPPの造水能力を補うべく、同プラントに隣接する海面に固定されていたが、その後、南部地域の水不足を緩和するためにシュケイクに移された。さらに、2011年6月には、2基ともヤンブーの現在の位置に移され、現地の水インフラの補助的な役割をはたしている。

世界最大の太陽エネルギー利用淡水化プラント

いっぽう、ペルシャ湾岸のカフジでは、世界最大の太陽エネルギー利用淡水化プラントが建設中である。
ACWA PowerのPaddy Padmanathan社長兼CEOは、淡水化による造水に再生可能エネルギーを使うことにより、費用対効果性が上がると述べている。同社長兼CEOによれば、淡水化に再生可能エネルギーを使わない場合の石油とガスの使用量の比は全体で石油65%対ガス35%となっているが、これを、再生可能エネルギー40%、原子力エネルギー15%、残りを石油とガスから得るという比率に変えることができるという。
Padmanathan社長兼CEOによれば、ACWA Powerがめざしているのは、電力と淡水化された水とを、持続可能な方法で、しかもできるかぎり低いコストで国内に供給することだという。

官民パートナーシップによる飛躍

海水淡水化における官民のパートナーシップについてPadmanathan社長兼CEOは、サウジアラビアは2004年から、発電と淡水化の分野で官民パートナーシップにより民間部門と責任を分かち合う方向に向かったとして、次のように述べている。
「われわれの創業株主らは、この国内のビジネス・プラットフォームの利用が、先進国の同業者と太刀打ちできる世界クラスのすぐれたアセット・デベロッパーになるチャンスにつながると見た。2009年までに、われわれは強力なポートフォリオを揃え、サウジアラビアの外に打って出た。その第1歩が、オマーンで稼働中のIWPPプラント――バルカ第1プロジェクト――の株式の58%の戦略的取得だった。
われわれはこれまでに、ドバイ、北京、イスタンブール、ヨハネスブルグ、およびラバトに国際オフィスを開設し、ヨルダンとオマーンでは現地操業をおこなっている。従業員数も大幅に増えて、いまでは2300人を超えている。われわれには、成長戦略に欠かせない業界屈指の人材を集める力がある」

タグ「, 」の記事:

2020年3月23日
中国水利部、「2020年水土保全業務要点」を発表――生産や建設における水土保全関連法規への違反行為を厳しく処罰し、「ブラックリスト」に加えるなど信用管理を実施
2019年12月27日
中国工業情報化部、水利部など、「2020年重点水使用企業水利用効率トップランナー選出業務実施に関する通知」を発表――選出の対象や基本的要件、選出手順など規定
2019年12月20日
チリの銅開発公社Codelco、丸紅のコンソーシアムが落札していた淡水化プラント建設の入札をキャンセル
2019年12月3日
中国北京市政府、水環境対策3年計画を発表――汚水処理施設の整備などの措置を提示
2019年12月2日
中国生態環境部、「農村黒臭水対策業務ガイドライン(試行)」を発表――農村黒臭水対策モデル事業の展開も規定