米国ミズーリ州セントルイス市の水道局とVeolia Water North Americaとのあいだで、かねてからコンサルティング契約を結ぶ話が進んでおり、これがさまざまな議論を呼んでいたが、2013年10月29日、Veolia側がこの契約の提案を取り下げた。
Francis Slay市長が率いる市当局は、Veolia Waterとの25万ドル(約2500万円)のコンサルティング契約はコストの削減と、市民の支払う水道料金を低く抑えておくために必要だと説明していた。しかし、この契約の話がおおやけになるにつれ、Veolia Waterの環境面での対応やビジネスのしかたについて激しく異議を唱える声が相次ぎ、Veoliaが同市の水道を乗っ取って水質を下げようとしていると言う市民も出てくるほどだった。
Veoliaとの契約に必要な25万ドルを水道局予算から削除
市の幹部のMary Ellen Ponderは2013年10月29日、市議会の歳入委員会で、Veolia Waterがコンサルティング契約の提案を取り下げたことを明らかにし、つぎのように述べた。
「水道局の効率向上に資すべく条例によって適法に選定された企業であるVeolia Waterは、われわれの仕事にそれだけの価値がないと判断した。これは、同社の事業に損害をおよぼしてまでするほどのものではないということだ。この契約の話はVeoliaが適法に獲得したものだが、それを同社はこれ以上進める気はないということだ。率直に言って、Veoliaを責めることはできない」
このとき歳入委員会は、水道局の予算から問題の25万ドルを削除してVeoliaとの契約を阻止するAlderman Terry Kennedy提出の条例案を審議していた。
委員会はこの条例案を、Veoliaの契約提案の取り下げにもかかわらず、5対2の賛成多数で可決した。
これについて市議会のLewis Reed議長は、「ありていに言えば、Veoliaは業績がひどく悪いということだ」と述べている。
反対派のコメント
今回の決定は、2013年はじめからこの契約に反対しつづけてきた“Dump Veolia Coalition”と称する団体にとっては大きな勝利となった。この団体は声明を発表し、そのなかでつぎのように述べている。「われわれは市議会が公共の利益を守るために働き、ひらかれた市政へ向かって踏み出したことを賞賛する。われわれの政治プロセスへのVeoliaの介入は受け容れがたい」
Veoliaはコメントせず
シカゴに本社を置くVeolia Water North Americaは、委員会に代表団を派遣したり、セントルイスのロビイストや、以前にCharlie Dooleyセントルイス郡長の選挙事務長を務めたことのあるJohn Temporitiミズーリ州民主党前代表を雇い入れたりと、契約獲得のために多大の時間と金を使ってきた。
今回の契約提案取り下げについてVeoliaは、2013年10月29日時点ではコメントの要求に応えていない。
市はセントルイス都市圏下水道公社の協力を得て効率化の追求へ
Slay市長は現在、老朽化したインフラを分析し、人口がいまよりも大幅に多かった時代に設計された市の上水道システムのコスト削減策をさぐるため、セントルイス都市圏下水道公社(MSD)の協力を求めているところである。これについてMSDは2013年10月29日、声明を発表して、セントルイス市水道局の「事業効率の調査」の実施について同市と口頭の合意に達していることを明らかにした。
25万ドルの支出の承認をめぐる市長の迷走
以前、Slay市長は、市の予算割当委員会の明確な同意を経ずにVeoliaへの25万ドルの支出を承認するようDarlene Green会計監査役に指示し、それがもとで、行政機関の権限と市の承認プロセスについて激しい議論が沸き起こった。
その後、2013年2月になって、大多数の賛同を得られないと見たSlay市長はこれを棚上げにし、Veoliaへの支出を認めるよう予算割当委員会に対して要請した。この支出は、予算には含まれていたが支出の承認がまだなされていなかったからである。
市の支出は、市長、会計監査役、および市議会議長の3者から成る予算割当委員会の同意を得ることになっている。
しかし、Slay市長は2013年10月にまたこの事案をGreen会計監査役に直接持ち込み、25万ドルは市議会が承認した全体の予算の1項目だから予算割当委員会の承認は必要ないとして、同会計監査役に署名を求めていた。