2013年10月15日付けのロイターの報道によると、Siemensは、自社の水技術部門をプライベート・エクィティのAEA Investors(本社:ニューヨーク)に約8億ドル(約780億円)で売却するための予備交渉を進めているという。これは、この事情に詳しいふたりの人物が語ったもので、AEAは入札の最終段階でプライベート・エクイティ・ファームのAmerican Industrial Partnersに競り勝ったという。
AEAは1968年に創設されたプライベート・エクイティで、本社のあるニューヨーク以外ではロンドン、ミュンヘン、香港、上海に事務所を置き、合計で約50人のスタッフを擁する。主には米国および欧州の企業を対象としているが、アジアの一部の国でも投資活動を行っている。その投資スタイルは「バイアウト投資(buyout)」がメインとなっている。AEAが重点を置く投資先は以下の4分野である。
- 付加価値産業(value-added industry)
- 特殊化学製品(specialty chemicals)
- 消費者製品
- サービス業
その具体的な投資先は以下のURLより閲覧可能である。
http://www.aeainvestors.com/investments.htm
以前から売却を模索
時価総額ではドイツでトップの企業で、鉄道車両から補聴器にいたるまでの幅ひろい製品をつくっているSiemensは、2012年11月に、水技術事業を売却する意向を表明していた。この工業界の巨大コングロマリットは当時、最も利益を生む部門――ガスタービン製造や発電プラント建設といった化石燃料による発電部門や、産業自動化部門――に集中したいとしていた。
Siemensによれば、水技術部門の大部分は高度に細分化された市場でビジネスを展開している上に、顧客は自治体関係と産業関係に分かれており、Siemensのグローバルな営業戦略にはあまりなじまないということだ。
Siemensの水技術部門の概要
Siemensの水技術部門は、従来型の水処理から応急給水や水殺菌システムにいたるまで、さまざまな製品を提供している。この部門の2012年の売上は13億ドル(約1300億円)で、入札参加者らの推計によると利子、税、減価償却、債務償還前の利益(EBITDA)は7000万ドル~8000万ドル(約68億円~約78億円)のあいだだったという。
Siemensは、2004年にVeolia EnvironmentからU.S. Filterのシステム・サービス部門を10億ドル(当時のレートで約1100億円)で買収するなど、この10年間でいくつもの企業買収をかさねて水部門を成長させてきた。
なお、今回の水部門売却に関してはGoldman Sachs GroupがSiemensのファイナンシャル・アドバイザーを務めているのだが、これについてGoldman Sachsはコメントしていない。