2013年9月11日に報じられたところによると、英国化学工業会（IChemE）の予測によれば、英国は2050年までに都市給水用の大規模海水淡水化プラント主要な地方自治体の海水淡水化プラントを少なくとも4つ、これに加えて最高で800の小規模ユニットを稼働させる可能性があるという。
人口増と気候変動により高まる海水淡水化需要
IChemEによると、現在英国で稼働している大規模海水淡水化プラントはロンドンの1カ所のみであるが、今後2050年までに都市給水用の大規模海水淡水化プラントを少なくとも4つ稼働させ、また、それより規模の小さなユニットを最高で800ユニットを設置する可能性があるという。IChemEは、英国の人口が増加し、気候変動の効果が水の供給に対するプレッシャーを増している状況下、2050年までに英国の海岸地帯と河口地帯において海水淡水化プラントがますます増えると見込んでいる。
2010年6月、英国はロンドン東部のベクトンに最初の都市給水用海水淡水化プラントをオープンさせた。Thames Waterが運営するこのプラントの給水能力は15万m3／日である。これはおよそ40万世帯の需要に対応する量である。このベクトンのサイトは英国において初めての都市給水用の大規模海水淡水化プラントと考えられるが、一方で小規模なサイトがシリー諸島のサイトに存在し、1990年初頭から給水能力227 m3／日の施設が稼働している。この設備は昨今、英国の環境・食糧・農村地域省（Defla）からの150万ポンド（約2億3800万円）の補助金を利用して新しい逆浸透（RO）技術に置き換えられ、現在試運転中である。
2050年までに世界各地で海水淡水化プラントは倍増の見込み
現在、世界150カ国で操業中または建設中の海水淡水化プラントの数はおよそ1万3000であるが、2050年までには世界でさらに1万8500の海水淡水化プラントが新たに操業可能となり、その数は倍増することが予測されている。英国については、少なくとも4つの都市給水用の大規模海水淡水化プラントと最大800の小規模なユニットがオープンし、英国の家庭用と産業用に水を供給する可能性があるとIChemEは語っている。IChemEでは、英国において海水淡水化の実行可能を高める要因は、技術の進化と人口の大きな増加、そして気候変動によって引き起こされる予測できない天候パターンとが組み合わさってもたらされると見ている。IChemEは2014年に、英国内および世界における確実かつ安全な給水のためのすべての選択肢を評価する白書を発行すると見られている。
IChemEの水分科会のメンバーであり、Aqueum*1の水質および水処理に関する独立コンサルタントのMartin Currie氏は次のように語っている。「逆浸透膜の機能はこれまで絶えず向上が図られ、その結果、海水淡水化はより化学的なものとなり、同時にエネルギー効率は向上しています。特に、これまでの海水淡水化の発展の中で最も刺激的なものが、淡水化技術のブレイクスルーです。現在、研究者らは我々の腎臓から見つかったアクアポリン*2タンパク質を採用したバイオミメティク膜プロセスのスケールアップに取り組んでいます。この膜は、従来型の膜に比べてより効率的に水を透過させることができるものです」
さらに、IChemEの政策･広報部長のAndy Furlong氏はこう付け加えた。「英国の人口は2050年には4分の1近く（24%）増加して7700万人となり、ヨーロッパで最も人口の多い国になるというという推定結果もあります。また英国環境庁は、我々は気候変動に引き起こされる将来のさらに極端な天候条件に備えて計画を立てる必要があるとの見解を示しています。今後、干ばつはより一般的な出来事となり、産業、農業、一般国民に対し重要な影響を与えるでしょう。実際2012年には、異常な天候パターンにより英国で2000万を越える人々が被害を受けたのです」
*1 Aqueum：英国と米国を中心に活動する、水産業に関連する独立コンサルタントの集団*2 アクアポリン：専ら水のみを透過する膜タンパク質。1992年に赤血球から米国で発見された。
