WBCSD、インド国内企業に向けて水利用の効率的な管理を支援する無料ツールを発表

2013年7月23日、「持続可能な開発のための経済人会議(WBCSD)」は、インド国内にある企業を対象として、水に関連するリスクの評価、および水利用のより効率的な管理を支援するツール「India Water Tool」を発表した。以下、概要を記す。

インド企業14社が共同でインド国内向けにカスタマイズ

今回このツールはWBCSDが2007年に発表し、各方面から幅広く評価を得た「Global Water Tool」を初めて国内用にカスタマイズしたものである。India Water Toolは無料のITベースのリソースである。インド中の地下水データを統合し、インドで操業している会社であればどの企業も使用できる。この1年間、インド企業が14社集まったグループがWBCSDの協力を得つつ連携して作業を進め、India Water Toolのバージョン1.を策定した。14の構成企業は以下のとおりである。

Ÿ共同議長:
ACC(セメント最大手)およびPwC(コンサルティング)

技術パートナー:
Infosys(ITコンサルティング)

ワーキンググループ:
Ambuja、BASF、Bayer、BP、DSM、HCC、Jain Irrigation、ITC、Pepsi、Siemens、Vedanta

所在地および水の使用データを入力すると会社の地下水の最大利用可能量、そして品質面でのリスクを表す地図とグラフが自動的に作成される。このソフトウェアは技術パートナー、Infosysによって開発された。WBCSDによればこのソフトはどの特定の分野にも特化していないが、中小企業から大企業まで国内のあらゆる産業に利用できる点が重要であるという。発表の中でWBCSDは、水の管理に関し判断の基礎となる情報を提供し、優先事項の理解を助けるこのツールは、水の使用管理方法を向上させようとするすべての企業にとって極めて重要な第一歩であると評価した。さらに、これに続いては実際の水の使用とスチュワードシップ(受託者責任)を果たすためにとりうる選択肢について、プラントレベルでの詳細な評価が実施されるべきだとした。

開発に携わった企業はその有用性とリリースのタイミングを評価

ACCのManaging Director、Kuldip Kaura氏は次のように語った。「各々のプラントや地域の流域において企業がどのように水の使用管理を行っているかということと、それらの企業が将来にわたって事業活動を実施していく能力との間には相関があることが次第に明らかになってきました。インドの大規模セメントメーカーとして、私たちはこれまで重要な天然資源として水によく注意を払ってきましたし、水域の創出や水の再利用、雨水の収集など、様々な水資源保存の方法を追究してきました。私たちは各々のプラントで、あるいは地域の流域において、水の使用を効果的に管理しなくてはならないということを理解しています。これは私たちがとるべき優先順位を教えてくれるとても貴重なツールです」

また、PwC のExecutive DirectorであるPrashant Vikram Singh氏は、今回の取り組みを極めて意義深くインド企業の大きな助けとなると評価した上で次のように強調した。「水管理の極めて重要な第一歩は、自然を理解し、その場所における給水の変動を知ることです。折しも、最近になって複数の顧客が水を重要な課題として認識し、取り組みを開始しました。このツールはまさに適切な時に発表されたと言えるでしょう」

水不足は国内最大の課題

水不足はインド国内における最大の課題になりつつある。政府の集計によると、32の主要都市のうち22都市において、市民は水不足に日々直面しているという。水資源の需給ギャップという点において最悪なのがジャムシェードプルであり、その差は70%にまで達している。その他にも、カーンプル、アサンソル、ダンバード、メーラト、ファリダバド、ヴィシャーカパトナム、マドゥライ、ハイデラバードといった都市でも同様の需給ギャップが起きている。

また、水関連の設備の老朽化やメンテナンスの不備も、この問題の一因となっている。インド最大の都市のひとつでもあるムンバイやデリーでは上記の需給格差は小さく、それぞれ17%と24%と報告されている。しかしながら、実態はそれよりもかなり悪い。例えばデリーでは、1日当たりの水需要量41億5800万リットルに対して供給量は31億5600万リットルとなっているが、実際には供給量の約40%は配水の段階で失われている。このため、記録と実状の間に大きな差異が生じているのだ。