Modern Water、中国で3件の戦略的契約――キャメロン英首相の訪中に合わせて

Modern Waterは、2013年12月2日、中国企業と3件の戦略的契約を結んだことを明らかにした。これら3件の契約の調印式は、キャメロン首相率いる英国政府訪中団の行事の一環として北京でおこなわれ、リビングストン次期貿易・投資担当閣外相が同席した。

これら契約は、Modern Waterの中国における事業にとって画期的な出来事といえる。Modern Waterはこの5年間、中国の最優先の政治課題である水不足、エネルギー効率、および環境保護という問題に取り組んできた。

3件の契約の概要

今回Modern Waterが中国企業と結んだ3件の契約の概要は以下のとおりである。

上海沖の徐公島に建設する淡水化プラントの契約獲得に向けたOttomen(奥徳曼)Estate ResourcesおよびHangzhou(杭州)Waterとの三者間概括契約。この淡水化プラントは、契約が実現すれば、Modern Waterの世界最先端の正浸透(FO)技術を中国で初めて採用したものになる。

中国最大の淡水化装置メーカーであり淡水化プラント建設会社でもあるHangzhou Waterとの、同社のコンテナ式海水逆浸透淡水化プラントの販売権に関する契約。この契約により、Modern Waterは中東で独占的に、また中国を除く残りの地域で非独占的に、Hangzhou Waterのコンテナ式海水逆浸透淡水化プラントを販売することができる。

Beijing Green Science and Technology Company(北京格維恩科技有限公司)がModern Waterの世界最先端の水質モニタリング製品を中国で独占的に販売する契約(これについては2013年10月にすでに公表されたもの)。

徐公島の淡水化プロジェクト

徐公島の淡水化プロジェクトの契約獲得に向けた三者間契約では、Modern Waterと他の2社とが、徐公島の日量500m3の淡水化プラントに協力して取り組むことが謳われており、Modern Waterの世界最先端のFO技術が中国で初めて使われることになっている。この技術は、他の技術と比べてエネルギー消費が最大30%も少ない上、環境への影響も小さくて済む。

中国で現在進行中の第12次5ヵ年計画では、水不足への対処と環境改善のために淡水化能力を大幅に増やす必要があるとされている。今回の三者間契約は、こうした動きをうけてのものである。徐公島の件が本決まりになってプロジェクトが成功すれば、Modern Waterはさらにいくつものプロジェクトに参入するための強固な地歩をかためることになる。

これについてModern WaterのNeil McDougall会長はこう述べている。「この契約は、FO技術の世界リーダーとしてのModern Waterの地位を確固たるものにしてくれる。われわれの技術を中国に初めて導入できれば、これはわが社にとってまさに画期的なことであり、中国にModern Waterのどんな未来が待ち受けているかと思うと、興奮を禁じえない」

また、キャメロン首相はこう述べている。「Modern Waterは、小さいながらも世界最先端の技術を中国に提供し、大きな取引をまとめるイギリスの優秀な企業のよい例だ――このように世界に打って出て成功するのは、イギリス企業だからこそなしうることだ」

中国におけるプレゼンス、ますます強固に

Modern Waterが中東においてHangzhou Waterのコンテナ式淡水化プラントを独占的に販売する契約は、2012年12月にはじまった両社の提携関係をさらに一歩前進させるものだ。このときModern WaterとHangzhou Waterは、共同で中国におけるプロジェクトの開発にあたる基本契約を結んでいる[1]。

また、Beijing Green Science and Technology Companyと交わした販売契約は、Modern Waterの中国における水質モニタリング装置事業――先進的な水質モニタリング・システムを水処理プラントや産業施設に供給する事業――の拡大を意味している。

これらの契約に加えて、Modern Waterが最近になって上海にオフィスを開設したことは、中東や北米とともに主要市場のひとつである中国での同社のプレゼンスをさらに強固にする効果がある。

中国市場について同社のMcDougall会長はこう述べている。「中国はModern Waterにとって重要な市場でありつづける。われわれは、この5年間に中国で強固なプレゼンスを確立してきた。われわれは中国の水不足、エネルギー効率、および環境保護という問題の解決をめざしており、今回の契約は、われわれの世界最先端の技術がそれらにはたす役割を如実に物語っている」

これら3件の契約はすべて、英国の訪中団の中国訪問期間中に発表された。キャメロン首相率いるこの訪中団には、大臣らのほか企業の経営幹部らも多数含まれ、経済面でも両国間の関係強化がはかられた。

EnviXコメント上述しているように、Modern Waterは、2012年12月4日にHangzhou Waterと提携関係を締結したことを公表している。そして、それから約1年経って今回の3つの契約が発表された。非常にスムーズに中国市場への展開が進められつつあると言える。

この3件の契約のなかで特に、FO技術を用いた淡水化プラント契約の受注を目指す取り組みには注目する必要がある。すでにオマーンにて世界初の商用ベースとなるFO淡水化プラントを受注している同社にとって、中国での契約受注となれば、そのプレゼンスはさらに拡大するものとなるからだ。

中国国内の2000年~2012年までの海水淡水化による造水能力の推移は下図の通りである。また、2012年12月に公表された「海水淡水化産業発展“十二五”計画」では2015年に日量220万m3を目標値として掲げており、国内の海水淡水化産業の市場規模は300億元(約5100億円)にまで成長すると言われている。Modern Waterの有するFO技術は、従来の海水淡水化手法に比べて消費エネルギーを約40%削減できるもので、その技術的な優位性は高い。あとは市場進出の足掛かりを如何にして作り出すかが鍵であるが、今回の発表を見る限り、現時点では好調と言えるだろう。

201402001_1
図 中国での海水淡水化による造水能力の推移(2000 年~2012)と2015年の目標値

Modern Waterのフォーカスしている市場は中東と中国のふたつで、どちらも淡水不足に悩む地域である。同社は規模としてはまだそれほど大きくないが(2012年の売上は約380万ポンド(約6億3000万円))、今後、淡水化市場での注目プレーヤーになる可能性は十分に考えられる。

[1]EWBJ45号に関連記事有り「Modern Water、中国の杭州水処理技術開発センターと包括協定を締結

タグ「, , 」の記事:

2020年7月6日
中国標準化研究院、「汚水処理装置一式」など3本の国家標準の意見募集稿を公表し意見募集
2019年12月20日
チリの銅開発公社Codelco、丸紅のコンソーシアムが落札していた淡水化プラント建設の入札をキャンセル
2019年12月11日
Suez、ハンガリーのオロスラーニにあるUF膜グローバル製造拠点を拡張
2019年12月11日
金属有機構造体で淡水化用高性能膜を実現へ
2019年10月15日
チリの銅公社Cochilco、2018年度の銅鉱山での地表水、海水、再利用水の使用状況を発表