Veoliaがめざす成長分野――掘削リグの解体や、オタマジャクシによる内分泌攪乱物質追跡

Veolia EnvironmentグループのAntonie Frerot CEOは2014年2月6日の記者会見で、同グループの事業戦略について語った。以下は、この会見で同CEOが語った内容の概要である。

成長分野に積極投資

Veolia Environmentグループは、従来の水ビジネスが停滞するなか、石油掘削リグの解体、オタマジャクシによる内分泌攪乱物質の追跡、および鉱山廃水からの銅の回収に成長のチャンスを求めている。
水、廃棄物、およびエネルギーの分野にまたがって事業を展開する同グループは、2年計画でコストの削減と負債の軽減に努めてきたが、その成果が大きくあらわれつつあるいま、成長の可能性の高い分野に向かおうとしている。
同グループが特に力を入れている投資分野は、有毒廃棄物処理、原子力発電所および石油掘削リグの解体、農産食品部門の廃棄物管理、鉱業部門の水処理、および石油・ガス産業向けの環境サービスである。また、リサイクルと都市サービスも重点投資分野となっている。
これについてFrerot CEOはこう述べている。「これらの部門は、それぞれが大きな可能性を秘めており、われわれはその市場規模を数十億ユーロ、部門によっては数百億ユーロにもなると見込んでいる」

水ビジネスの比重が減少へ

Veolia Environmentグループの従来の水ビジネスは、依然として売上の47%を占めてはいるが、ヨーロッパ経済の減速、コンセッション期間に対する規制上の制約、それに水道ネットワークの官有を好む傾向とが相俟って、現在大きな圧力にさらされている。ちなみに、Veoliaは2010年に、同グループの象徴ともいえるパリの水道事業のコンセッションを失った。
収益の50%を稼ぎ出しているフランス国内市場において、Veoliaは契約更改のたびに料金への圧力にさらされ、これまでよりも短期の契約を強いられており、そのマイナスを挽回するために産業顧客への志向をますます強めている。
Frerot CEOは、Veoliaが株式の3分の2を保有しているエネルギー・サービス会社、Dalkiaが、もう一方の親会社であるÉlectricité de Franceから2014年末までには完全に分離独立する予定で、その後はDalkiaの国際事業をVeoliaブランドのもとで遂行していくとしている。
これが計画通りに進むと、Veolia Environmentグループの売り上げに占める部門別の比率は、エネルギー・サービスが21%、水が44%、廃棄物が35%となる。

掘削リグの解体に大きなビジネス・チャンス

Frerot CEOは、世界中で今後見込まれる石油・ガス掘削リグの解体がVeolia Environmentグループにとって大きなビジネス・チャンスになると見ている。向こう10年間に、北海、メキシコ湾、および東南アジアで解体が必要になる石油プラットフォームはおよそ2000基におよぶ。
石油プラットフォームの解体は1基あたり最大1億ユーロ(約140億円)の費用がかかり、石油掘削から出る放射性の残滓などの危険な廃棄物を処理する必要もあるため、こうしたプロジェクトを請け負うスキルのある企業はVeoliaを含めてごくわずかしかないという。
この記者会見に同席したVeolia Northern EuropeのEstelle Brachlianoff取締役によると、Veoliaは北海で過去6年間に、BP、Total、ConocoPhillips、Hess、Royal Dutch Shellなどの石油プラットフォームを6基解体した。「ほかにも多くのプロジェクトが控えており、われわれはこのビジネスにつよい自信をもっている」とBrachlianoffは言う。

水リサイクルでは生物利用の先端技術で優位を保持

Veoliaの伝統的ビジネスである水リサイクルにおいては、イノベーションにより優位を保つ必要があるとFrerot CEOは言う。同CEOによれば、ベルギーのヴィルヴォールデのプラントはその最先端を行くものだ。
ヴィルヴォールデのプラントでは、バクテリアを使って廃水からプラスチックを回収している。また、オタマジャクシを使って水中の内分泌攪乱物質の検出をおこなっている。
Veolia WaterのKlaus Andersen取締役は、ヴィルヴォールデのプラントの生物学的処理プロセスではバクテリアが吸収したポリマーでプラスチックができると説明している。「バクテリアにある種のストレスをあたえると、細胞のなかにポリマーを貯めこむ」と同取締役は言う。

鉱石採掘と石油・ガス産業向けビジネスも高成長分野

Frerot CEOは、鉱石採掘と石油・ガス産業もVeoliaに大きな成長のチャンスをあたえてくれる分野だと述べている。どちらも大量の水を使用し、Veoliaは使用済みの水をリサイクルする前にそこから鉱物資源を回収している。たとえばチリ銅公社の鉱山では、Veoliaは廃水からおよそ3%の銅を回収している。

この4年で負債を半減

Veolia Environmentの事業再構築プログラムについてFrerot CEOは、これはほとんど完了しており、2012年と2013年の2年間にVeoliaはおよそ63億ユーロ(約8800億円)の資産売却をおこなったことを明らかにし、「困難な状況にもかかわらず、売却した資産のほとんどに、平均してコア利益の10倍以上の値がついた」と述べた。
Frerot CEOはまた、Veolia Environmentの純金融負債が2013年末には80億ないし90億ユーロ(約1兆1200億ないし1兆2500億円)となり、これは同年9月の96億ユーロ(約1兆3400億円)と比べても目標に向かって順調に推移していると述べ、「この4年間に、われわれは負債を半分にした」と語った。
なお、Veoliaは2013年の決算を2014年2月27日に発表する予定である。