スペイン、水事業モデル改革で2021年までに126億ユーロの経済効果が期待される

スペインのインフラ・発電事業会社である Acciona社の委託でPwCが作成した報告書「スペインの水事業の現状分析および将来への展望(”La gestión del agua en España, análisis de la situación actual del sector y retos futuros”)」によれば、スペインにおける水事業モデルを改革すれば、2021年までに157億ユーロ(約2兆1980億円)の投資事業により、GDPに126億ユーロ(約1兆7640億円)の経済効果及び、2万3700人の雇用創出が見込まれる。また上水道網の効率化により133億ユーロ(約1兆8620億円)のコスト削減も期待出来、200万トンのCO2削減にもつながると報告されている。
報告書は、以下のサイトからダウンロード可能(スペイン語表記)。
http://www.acciona.es/media/1226705/informe_gestion_agua.pdf

水事業への投資

本報告書によれば、スペインの水事業への投資はGDPの0.11%で、これはEU諸国平均の0.27%を下回り、EU13ヶ国中第12位となっている(第1位はポーランドの0.73%、最下位はスウェーデンの0.10%)。また上水道網での漏水割合は、EU諸国平均が21.4%なのに対し、スペインでは2007年が23.97%、2010年は25.9%と増加している。しかし、このような状況にも関わらず、新規供給網の新規敷設や更新への2010年の投資は、対2007年比19%減となっている。2010年の消費者による水道料金支払いおよび政府補助金を合わせた金額は128億ユーロ(約1兆7920億円)で、この額は電力事業の45%、通信事業の32%に相当するが、水事業への2007年から2010年の累積投資額は、電力事業の21%、47%に留まっている。

201402043_1
図 スペインにおける上水道網への投資額および漏水率の推移
(出典:La gestión del agua en España, análisis de la situación actual del sector y retos futuros)

法的枠組み

スペインでは水事業に関わる行政機関の数が多く、安定した規制枠組みに欠けている、スペインで水事業に関わる行政機関の数は6機関で、オランダの2機関、メキシコの4機関などよりも多い上に、電力事業や通信事業のようなそれらの機関を統制する機関がない。都市部の水道料金を設定するのは市町村レベルの地方自治体となっており、全国レベルでの価格設定方法や見直し方法を決定する機関もない。

政府による水管理モデル改革

本報告書では、以下の改革が提案されている。
中央政府による水道料金の設定方法確立および、その適用にあたってのインセンティブ導入(尚スペインの水道料金は、EU諸国の平均が立方メートルあたり3ユーロであるのに対し1.62ユーロと低く、料金が浄水コストや配水コストをカバー出来ていない)
水事業に関わる市町村の権限の明確化
公共サービス管理およびインフラ整備部門と、サービス運営部門の事業体の分離
独立機関による、水道料金設定管理強化

報告書ではこの他、国の財政赤字の削減、事業資金確保、民間企業の技術導入による事業の効率化の為、水事業における官民パートナーシップ(PPP)の推進や、スペインの水事業企業の国際化も推奨されている。

タグ「」の記事:

2020年7月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中のマイクロプラスチックの定義を発表
2020年7月9日
米EPA、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定
2020年5月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中の六価クロムの新汚染基準策定に向けたワークショップを開催
2020年3月24日
米EPA、飲料水中のPFOAとPFOSの規制を予備決定
2020年2月23日
米州水規制規制機関協会ADERASA、上下水法規に関する第12回イベロアメリカ・フォーラム開催