テキサス州サンアントニオ市の水道局理事会は2014年2月10日、渇水対策として、地下水を他の自治体から購入するのではなく、淡水化プロジェクトを拡張する道を選んだ。
サンアントニオ市水道局の理事会は、局内の意見を採りいれ、現在提案段階にある市営の電力・ガス事業者、CPS Energyとの提携によって、地下かん水の利用をさらに進めることを決定した。
サンアントニオのあるベア郡、および隣接する複数の郡からかん水を供給してもらうことで、淡水化プラントの建設を現在計画しているのと同じ敷地内に、CPS Energyとの提携によるさらに規模の大きな淡水化プラントをつくることができる。このサイトではすでに、帯水層の水を貯留・回収するプラントが稼働しており、また、カリッゾ帯水層からの汲み上げ量を増やすプロジェクトも進行している。これらプロジェクトを同一のサイトで実施することにより、土地購入の費用を節約できるほか、管理・運営の一元化をはかることもできる。
民間からの提案は割高な上に水の確保が不確実
サンアントニオ市水道局はこれまで、水を他の自治体から購入する提案を3社の民間企業から受け付けている。そのうち最もすぐれているとされた提案はAbengoa Water LLC(本社:スペインのセビーリャ)によるものだった。
民間企業からの提案によると、市は向こう30年間、最大8500万ドル(約87億円)を毎年払いつづけなければならず、2019年にはおよそ9%ないし12%の水道料金引き上げが必要になる。しかもこれには、インフラ統合コストが含まれていない。さらに、地域の地下水を管理する公的機関である各地下水管理区には帯水層からの地下水の汲み上げを規制する権限があり、その上、取水制限の通知や不服申し立ての手続きがほとんど定められていないケースがしばしばある。
サンアントニオ市水道局のGreg Flores広報官は、ラジオ局の取材に応じてこう述べている。「最も興味深い提案を検討した結果、それがあまりにもリスキーであることがわかった。水がサンアントニオに供給されない場合でも、水道利用者が料金を払わなければならないしくみになっていたからだ」
淡水化は段階的導入が可能
Greg Flores広報官はさらにこう述べている。「代替策として淡水化を選んだのは、時間をかけて段階的に導入することができ、費用と、水道料金への影響を、長期にわたって分散させることができるからだ」
なお、サンアントニオが現在進めている淡水化プロジェクトは、Parsons Corporation(本社:カリフォルニア州ロサンゼルス)による設計の段階で、その構成は、13本の原水汲み上げ井戸、原水および淡水化処理済の浄水の移送設備、残留水移送設備、3本の深層注入井戸、処理能力が日量3万7850立方メートルの逆浸透(RO)膜淡水化処理プラント、および貯水容量が日量2万8400立方メートルの浄水貯水場となっている。