正浸透による海水淡水化は逆浸透よりもエネルギー効率が低い――MITの研究者らが論文発表

正浸透(FO:Forward Osmosis)淡水化のエネルギー効率について、マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学部のJohn Lienhard教授と、ポスドク研究員のRonan McGovernが最近おこなった研究の成果がJournal of Membrane Science誌に掲載された*1。それによると、FOによる海水淡水化は、一般に考えられているのとは反対に、逆浸透(RO)による淡水化よりもエネルギー効率がはっきりと低いことが判明したという。

FOによる淡水化では、ドロー溶液と呼ばれる高濃度の溶液に、半透膜を通して海水から水だけが引き込まれる(下図)。これが第1ステップで、つぎの第2ステップでは、高濃度のドロー溶液から溶質を除去して純水を得る。これに対して逆浸透では、海水に圧力をかけ、水だけを通す逆浸透膜を透過させることにより直接脱塩する。

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図 逆浸透法(左)および正浸透法(右)による淡水化原理のイメージ
(各種資料よりEnviX作成)

正浸透のエネルギー効率が低い理由

論文の筆頭著者であるMcGovern氏は、ROとFOのエネルギー比較をおこない、それぞれのエネルギー消費量を明らかにした。McGovernによれば、問題は、FOの場合、ドロー溶液から溶質を除去して淡水を得る第2ステップに要するエネルギーがROに必要なエネルギーと同程度だったとしても、FO全体を見ると実際に消費するエネルギーが逆浸透のそれを上回ってしまうことだという。これは、FOの第1ステップの終了時のドロー溶液の濃度が、必然的に通常の海水濃度よりも高いためである。つまり、このドロー溶液から溶質を除去するには、大きなエネルギーが必要となるのである。

他の用途では正浸透のほうが有利な場合も

McGovern氏によると、他の用途――ハイドレーション・ドリンクの生産など――には、FOのほうがROよりも向いている場合もあるという。そのような用途では、必要なのはFOの第1ステップ――たとえば濃縮シュガーシロップを望みの濃度にまで薄める工程――のみとなり、FOがROよりも有利になる

 

*1 Ronan K. McGovern and John H. Lienhard V., 2014: On the potential of forward osmosis to energetically outperform reverse osmosis desalination, Journal of Membrane Science,
doi: 0.1016/j.memsci.2014.05.061
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0376738814004670

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