中国の研究者らが、バクテリオファージと細菌の両方を効果的に除去することのできるグラフェン・Fe3O4複合体(G-Fe3O4複合体)のナノ粒子をソルボサーマル法により合成することに成功した。これは、ACS Applied Materials & Interfaces誌に2015年1月29日付で掲載された研究成果である*1。この論文によれば、G-Fe3O4複合体ナノ粒子の大腸菌除去効率は93.09%ときわめて高く、これに対してFe3O4のみのナノ粒子だと除去率は54.97%にしかならない。
さらに、G-Fe3O4複合体はバクテリオファージms2ばかりでなく、黄色ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス、赤痢菌をはじめとするさまざまな細菌など、広範な病原体を高い効率で除去することができることもわかった。また、実際の水のサンプルを使った詳細な実証試験もおこなわれ、G-Fe3O4複合体を使えば、実際の水に含まれる細菌の除去効率も94.8%に達することが証明された。論文ではさらに、G-Fe3O4複合体の除去メカニズムについても考察している。
グラフェンにFe3O4を組み込んだ複合体が問題を解決
水中の生物有機汚染物質を除去するには、物理的方法(吸着、蒸留、および濾過)、生物学的方法(活性汚泥)、化学的方法(凝析および塩素殺菌)、光触媒による方法など、さまざまな技法が使われている。近年では、ナノマテリアルを利用した方法がひろく研究されている。ナノマテリアルには、小サイズ効果、量子サイズ効果、大表面積効果、すぐれた力学的性質などがあるためである。
しかし、そのサイズの小ささゆえに、ナノマテリアルを水から分離するのは難しく、そのため、ナノマテリアルをリサイクルしたりリユースしたりすることが困難であるばかりか、深刻な二次汚染が発生するなるおそれもある。
グラフェン複合体についても、これまで、重金属や有機染料の除去に使われたことはあるが、Fe3O4で修飾されたグラフェンを使って水中の病原体や細菌を除去したという報告はまだなされていなかった。グラフェンは比表面積がきわめて大きな2次元単一シート構造であることから、Fe3O4の凝集を防いで除去効率を上げることができる。
*1 Sihui Zhan, et al., 2015: Highly Efficient Removal of Pathogenic Bacteria with Magnetic Graphene Composite, ACS Applied Materials & Interfaces, doi: 10.1021/am508682s
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/am508682s