欧州会計監査院がドナウ川流域4カ国の廃水処理施設を評価、汚泥再利用の問題指摘

欧州最大の河川流域であるドナウ川流域は、19カ国にまたがり、廃水など多くの汚染源にさらされている。そのうち4カ国(チェコ、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア)の都市廃水処理指令(91/271/EEC)の実施状況を調べてまとめた報告書*1を、欧州会計監査院(ECA)が2015年7月13日に公表した。EUは、これら4カ国の廃水処理施設に2000~2013年に79億ユーロを投じた。

報告書は、EU資金が主な水政策目標の達成に向けて重要な役割を果たしたが、4カ国すべてで規制の順守と利用可能なEU資金の活用に遅れが生じているとしている。また、施設での廃水処理は適切に行われているものの、それから生じる汚泥と過剰雨水への対応に弱さが見られる部分があるとしている。さらに、調査対象となった28施設の3分の1は、規模が大き過ぎて運営が持続できなくなる潜在的可能性があると指摘している。

その上で報告書は、1986年下水汚泥指令を改正し、汚泥の再利用時の汚染物質の監視をEU各国に義務付けるよう提案している。欧州委員会は、そうした改正の予定は当面ないとし、先ずは肥料規則の改正時に下水汚泥を組み込み、法的拘束力のある新たな重金属規制値を定める可能性を検討すると返答している。

またECAは、汚泥の再利用の一部(農地以外やコンポストへの使用を含む)については環境保護のためのEUレベルの規制要件が無いと指摘している。そして、廃水処理施設の建設をEUが支援する際は、汚泥の再利用に関する適切な計画があることを条件とすべきで、その旨を定める条項を2014~2020年のEU資金提供協定に含めるべきとしている。しかし、欧州委員会は、そのような条件を導入する法的根拠が無いとしている。

さらにECAは、都市廃水処理指令が定める廃水中の汚染物質の濃度基準を、技術の改善などを考慮して改める必要があるかを評価することや、各国当局が実施すべき汚染物質濃度の検査回数に関する規定や違反時の罰金が、十分な抑止効果をもたらしているかを評価することを助言しているが、欧州委員会は、そうした予定は無いとして拒否している。一方、豪雨時の下水施設からの氾濫(オーバーフロー)について、許容回数を定める規定を検討すべきとのECAの助言は受け入れている。

このほかECAは、平均的な家庭の収入を考慮しつつ最低限の基準を満たす料金を定める“責任ある廃水価格設定政策”を実施するよう欧州委員会が各国に促す必要があるとしている。今回、ECAが評価した施設のうち、大多数が課す廃水処理料金は“安すぎて、経済的運転寿命が来た際に設備を更新できない”ほどだった。

*1 http://www.eca.europa.eu/Lists/ECADocuments/SR15_02/SR_DANUBE_RIVER_EN.pdf

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