中国浙江省紹興市の工場における汚染排出量自動測定データの活用状況

中国浙江省紹興市は染色工場(汚水を多く排出する業種として知られている)が多いことで有名である。多数の染色工場が広く分布しているため、紹興市の環境保護業務には困難が多い。2007年、国が環境情報及び統計能力の整備を行った機会に、紹興市は汚染源自動測定システムの整備に着手した。2015年9月に中国環境報にて報じられたところによると、これまでに、紹興市では汚染源自動測定システムが500セット以上設置され、環境監視センターとオンラインで結ばれている。それにより、汚染源の管理レベルが全面的に引き上げられ、「汚水は眼で見て判断、排ガスは臭いで判断、騒音は聞いて判断」という原始的な管理状態に終止符を打ち、リアルタイムの測定を実現した。

2015年、紹興市は公開入札を通じ、監査業者に委託して、市全ての汚染源オンライン測定システムの運転状況の監査を行った。月平均410枚の故障連絡シートを発行し、延べ80カ所の現場検査を行ったところ、管理効率の向上、システムの運転の正常化に積極的な役割を果たした。

いっぽうで、自動測定システムの運用に伴い、ソフトウエアのパラメータを修正するなどのデータねつ造問題が相次いで発生した。データの真実性と有効性の問題が紹興市の直面する新たな問題となった。「インターネットプラス」の時代を迎え、紹興市は、データの真実性を保つため、様々な手段を模索し始めた。

紹興市の重点汚染源の各工場では自動測定装置を設置しているが、環境保護部門の係官が測定データの異常に気づいたとき、工場がすぐに対処できるよう、ショートメール、電話などで警告を与えるが、一部に、基準値を超過しても汚染を排出し続ける企業もある。環境保護部門が罰を与えたければ、係官が現場で調査をし、サンプルを採取し、証拠を固めてからでないと罰金切符を切ることができない。しかし、技術監督検測院の検査に合格した設備については、その測定データは法的根拠として使えるので、環境保護部門が法執行をする場合に効率が上がる。現在、紹興市街地区にある78社の工場では既に強制検査を受けており、郊外地域での検査も徐々に進められている。

紹興市環境保護局では、データの有効性以外に、データ収集段階についての真実性の確保にも工夫をしている。

工場での汚水排出からサンプル採取までの過程において、企業が作為を入れることを防ぎ、自動測定室の計測装置に悪意の干渉が介入するのを防止するために、紹興市環境保護局は測定室の施錠と画像モニタシステムの設置を進め、「画像+施錠+アラーム」による管理方法を採っている。測定室は権限のある者だけが入室でき、メンテナンス要員、工場係員、環境保護担当者などに、異なった権限レベルの鍵カードを発行する。バックグラウンドでは要員の入室・退室をリアルタイムで記録し、画像も保存する。規定に反して入室するものについては、センサが自動的に反応し、室内を撮影録画する。

紹興市環境保護局のオンライン測定システムの監督は第三者にゆだねられ、データの有効性と正確性を確保するために、紹興市環境保護局では監督者の管理を強化している。監督者による点検が漏れなく、くまなく、正確に行われるよう、紹興市環境保護局では自動測定システムの維持管理の規則を制定し、次の6つの業務を行うよう求めている。

  1. 汚染源自動測定装置の資料、記録、過去データを閲覧し、装置の運転状況を掌握する。
  2. サンプルを採取するパイプ、計測器の運転状況、データの状況を見て、問題を探す。
  3. 標準液を校正し、計測器が正常に運転されているか、データが正常に送られているかを検査する。
  4. 工場の環境保護担当者及びメンテ担当者とたえず連絡を持ち、自動測定装置の運転状況を聞き取り、問題がある時はすみやかに連絡して解決するようにする。
  5. 何か問題があれば、設置、調整、運転、故障、調整などの状況を照会し、工場とメンテナンス業者から届出書類を提出してもらうようにする。
  6. 現場検査の状況をすみやかに記録しておく。

紹興市では、企業の自動測定データをリアルタイムで公開し、毎月28日を「環境情報公開デー」とし、汚染源自動測定データが基準値を大幅にオーバーしている工場名を公開することで、大衆による監督を推進している。

紹興市環境保護局では毎月、市民代表に参加してもらい、「互いに点検する」キャンペーンを行っている。また、基準値超過の情報は、徴税、補助金交付、貸付などの参考あるいは根拠として使用する。2015年の年始以来、10社余が環境違法行為のために銀行から与信を拒否されていて、その額は4000万元(約8億円)に上る。

今後、紹興市環境保護局は、企業による環境情報の公開を基礎として、公益訴訟制度を推進しながら、環境信用評価システムの構築を今後進めていく予定である。