ドイツ環境庁、地下水から薬物残留物が検出される原因と流入経路を解明

ドイツ連邦環境庁は2016年6月14日、報告書『地下水から家畜用薬剤が検出される原因の解明』を発行した(以下のリンクに、報告書の原文掲載)。
https://www.umweltbundesamt.de/publikationen/aufklaerung-der-ursachen-von-tierarzneimittelfunden

同庁によると、人間用の抗生物質ばかりでなく、畜産用の抗生物質も地下水から検出されている。今回の調査対象は、ドイツ北部のニーダーザクセン、シュレスビヒ・ホルシュタイン、ノルトライン・ヴェストファーレン各州の11カ所の地下水である。これら測定地点で2013年9月に地下水を調査したところ、さまざまな抗生物質残留物が検出された。そこで今回、連邦環境庁は、抗生物質の流入経路を調べることにした。そしてそれは、圧倒的に農業由来のものであることがわかった。ただし、非常に高い濃度が検出された2カ所の測定地点の場合、近くにある小規模下水処理場に由来することも明らかになった。

同庁によると、抗生物質は自然界に存在しないので、薬剤耐性菌が発生する危険がある。また、土壌や地下水の生命体への影響も評価できないのが現状である。同庁のM・クラウツベルガー長官は、「環境庁は予防上の理由から、人と動物に投与する薬剤を対象に、地下水しきい値を設定するよう勧告する」と述べた。とりあえず、殺生物剤と農薬のしきい値を設定し、その基準を100 ng(ナノグラム)/Lとする。これを地下水令のしきい値に収録し、地下水中の薬剤を定期的に調査しつつ、基準超過を適時に把握するとともに、流入原因を特定できるようにする。

個別の調査結果は次のとおりである。

(1)    2013年の調査で、抗生物質残留物の濃度が非常に高かった2カ所の測定地点を再び調査した。スルファメトキサゾールの濃度は前回、最大950 ng/Lであったが、人による抗生物質利用の結果であることがわかった。(なお、日本での商品名は、バクタ®(塩野義製薬)やバクトラミン®(中外製薬)などである。)

(2)    家畜用薬剤であるスルファジミジンは、11カ所のうち9カ所で微量(約10~20 ng/L;最大70 ng/L)ながら検出された。そのうち半数の測定地点では、薬剤として利用された物質が、家畜小屋から水肥を経て、地下水に流れ込んでいた。

(3)    作用物質であるスルファジアジンとその分解産物もまた、微量(100 ng/L以下;最大90 ng/L)とはいえ検出された。これはほとんどすべて家畜用であった。施肥を通じて耕地にまかれ、浸透し地下水に達している。この流入経路は、8カ所の測定地点で確認された。それゆえ、この経路による地下水汚染の可能性も排除できない。