仏ANSES、スマートメーターが発する電磁波の健康影響に関する評価報告書を改訂

フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は2017年6月20日、スマートメーターが発する電磁波による公衆の健康影響に関する2016年12月の評価報告書の改訂版を公表した。同報告書は下記URLから入手可能である。
https://www.anses.fr/fr/system/files/AP2015SA0210Ra.pdf

2015年8月17日の「グリーン成長のためのエネルギー転換に関する法律n°2015-992」では、国内におけるスマートメーターの普及を促進する政策が定められている。スマートメーターには、電気・ガス・水の消費量を遠隔操作で読み取り、それらのデータを供給者に定常的に伝達する機能があるが、その反面、スマートメーターが発する電磁波への曝露に伴う潜在的な健康リスクも懸念されている。このような状況を考慮し、保健総局(DGS)はANSESに、スマートメーターが発する電磁波への公衆の曝露の実態及び健康への影響に関する調査を要請した。

ANSESは2016年12月の報告書において、電気スマートメーターの電力線搬送通信(PLC)方式あれガス・水スマートメーターの無線通信方式であれ、現在程度の普及状況であれば、短期的にも長期的にも電磁波への曝露による健康影響が生じる可能性は低いと結論した。しかし、当時は新型の電気スマートメーター“Linky”に関する情報が十分ではなかったことから[1]、ANSESは建築科学・技術センター(CSTB)に対し、LinkyのPLCにともなう電磁波への公衆の曝露に関する情報を補完するための測定キャンペーンを要請した。ANSESがこのほど公表した評価報告書の改訂版では、CSTBが取得した最新データが考慮されている。

CSTBは同センターの周辺地域において実際にLinkyが機能している状態で電磁波を測定し、現実的に曝露量が最大となる条件下で従来型のスマートメーターとLinkyとを比較した。その結果、一般家庭におけるLinkyのPLCにともなう電磁波への曝露時間は当初の予想よりも長かったものの、いずれにしても曝露量はきわめて低く、他の家庭用の電気・電子機器とほぼ同等であることが明らかになった。この結果を踏まえ、ANSESは今般の改訂報告書において、2016年12月時点での認識を変更する必要はないとの判断を表明した。

[1] ただし、ANSESは2016年12月の報告書において、当時入手可能であったデータに基づき、Linkyについて、スマートメーター自体とPLCが発する電磁波への曝露量は法定の暴露限界値をはるかに下回っており、一般家庭で用いられている他の電子機器(テレビ、ノートパソコンの充電器、IHクッキングヒーター等)とほぼ同等であるとの見解を示していた。