PVCPA、米国上下水道配管の環境影響・コストを分析

北米PVC配管業界団体Uni-Bell PVC Pipe Association(以下、PVCPA)は2017年6月20日、北米地域を対象とした上下水道配管の環境影響及びコストに関する検証結果を発表した。同調査では、ポリ塩化ビニル(PVC)、コンクリート、ダクタイル鉄、高密度ポリエチレンなどを材料とする各配管の、製造から廃棄に至るライフサイクル全体の環境影響やコストを包括的に評価、比較分析した。その結果、PVC配管は、他の材料の配管と比較して環境面やコスト面で優れていることが明らかとなった。

同調査は、コンサルティング企業Sustainable Solutions Corporation(SSC)が担当した。SSC技術者は、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)が策定するISO 14040シリーズ「ライフサイクルアセスメント基準」を参照し、PVC配管の環境影響を評価したほか、他の材料で製造された配管の耐久性、性能、環境負荷を検証した。SSCは今年4月、検証結果を分析した調査報告書“Life Cycle Assessment of PVC Water and Sewer Pipe and Comparative Sustainability Analysis of Pipe Materials[1]”を発行した。

同報告書の主な要点は以下のとおりである。

  • ライフサイクル設計において配管の持続可能性を評価する場合、配管に使用される全ての材料におけるライフサイクルを通じた影響を理解、検証することが重要である。
  • 60年以上に亘る実地経験や掘り起し調査、ラボテストを始め、腐食の進行速度や破損の度合いなどを検証した結果、PVC配管の耐久年数は100年を超えることが明らかとなった。
  • PVCは、細菌の繁殖や病原菌の発生を防ぐことが可能である。
  • 耐久年数を超えて配管を使用した場合、運用・保守コストが高額となる。特に、ダクタイル鉄製やコンクリート製の配管は、設置後直ちに配管内面壁の劣化が進む可能性がある。
  • これまで定義付けられてきた配管の耐用年数を見直す必要がある。特に、鉄製やコンクリート製の配管は、当初想定された耐用年数まで使用できない場合が多いことから、耐用年数を再検討すべきである。また耐用期間内でも、鉄製やコンクリート製配管は破損し易く、漏水や水質などの問題があるほか、配管の腐食の防止に必要となる運用・保守コストも高額となり、運用効率性に大きな影響を及ぼす。
  • PVC配管は設置コストが低いほか、効率性や腐食耐性に優れているほか寿命も長いことからライフサイクルコストが低廉である。
  • 金属製やコンクリート製の配管は、内部壁の劣化を軽減するために、飲料水に化学添加物(リン塩酸)を混入させる必要がある。しかし、リン塩酸は、藻類の繁殖を増進させる場合がある。
  • ダクタイル鉄製配管は、材料の加工、製造、輸送、設置を通じた炭素排出量が、PVC配管と比較して最大9倍に達する。
  • 米国で敷設されている上水道配管の66%は、幅が8インチ以下の小型配管である。同等の幅のPVC配管を敷設した場合、ダクタイル鉄製配管と比較して、上下水道水の送水にかかるコストは100年間で210億ドル(23721円)節約できる。また、ポリエチレン(HDPE)製配管と比較した場合は370億ドル(4兆1794円)の節約となる。
  • 上下水道事業者によるエネルギー消費量は、地方自治体全体の約40%を占めている。上下水道水の送水に圧力をかけるために大量のエネルギーを必要とするため、環境負荷が高くなる可能性がある。
  • PVC配管の内面壁は滑らかであり、時間の経過とともに表面が粗面化することはないため、100年に亘り配管を使用した場合でも上下水道水の送水に必要となるエネルギー消費量は一定となる。ダクタイル鉄製やコンクリート製配管は、配管の腐食や漏水、内部の劣化などの影響により、大量のエネルギーが必要となる。そのため、これらの配管と比較して、PVC配管はライフサイクルコストが大きく削減される。
  • 北米地域における水道事業者の75は、配管の腐食に悩まされており、配管の耐久性と腐食耐性が重要となる。配管の耐久性と腐食耐性は、配管のライフサイクル全体に大きな影響を与える。敷設後11~14年以内にダクタイル鉄製配管は徐々に腐食が進行するため、配管を100年単位で使用する場合、その間配管を頻繁に取り換える必要がある。


図 腐食性土壌の分布(赤い地域では、スチール製配管の腐食の危険性が高い)
(出典:Life Cycle Assessment of PVC Water and Sewer Pipe and Comparative Sustainability Analysis of Pipe Materials)


図 腐食した鉄製配管の例(ミシガン州・フリント市)
(出典:Life Cycle Assessment of PVC Water and Sewer Pipe and Comparative Sustainability Analysis of Pipe Materials)


図 1年間での100マイル毎の破損率(PVCの破損率が最も低い)
(出典:Life Cycle Assessment of PVC Water and Sewer Pipe and Comparative Sustainability Analysis of Pipe Materialsよりエンヴィックス作成)

  • 幅8インチのダクタイル鉄製配管を介した上下水道の送水に必要となるエネルギー消費量は、PVC配管と比較して最大54%増加する。また、同等幅のポリエチレン製配管の場合、PVC配管と比べて送水に必要となるエネルギー消費量は100%増加する。
  • 鉄、コンクリート、ポリエチレンなどの配管の材料の中で、製造から廃棄に至るライフサイクル全体のエネルギー消費量や炭素排出量は、PVCが最も少なく最適な材料である。
  • 廃棄物として回収した材料を再利用し配管を製造した場合、ライフサイクル全体の環境負荷に影響を及ぼす。例えば、回収した金属を再利用しダクタイル製配管を製造した場合、PVC配管の製造と比べて多くのエネルギーが必要となる。同様に、回収したくず鉄から鉄製配管を製造する場合、鉄鉱石から純粋に鉄製パイプを製造する場合と比べて有害物質の排出量が多くなる。

今回の調査の結果、上下水道インフラにてPVC配管を利用した場合、ライフサイクルコストや温室効果ガス排出量の点から、他の材料の配管と比較してコスト面及び環境面で優位性があることが明らかとなった。PVC配管は、コスト面で優位性があるほか、耐久性や破損の頻度、腐食耐性、長期的な性能といった面で優れており、高い持続可能性を達成することが期待される。

PVCPA理事長のBruce Hollands氏は、「連邦・州・地方政府は、米国で老朽化が深刻化している上下水道インフラの再建を目指している。同報告書は、これらの政府機関の政策立案者に対して、近代的な配管材料に関して必要不可欠な情報を提供する。上下水道システムの品質改善はトランプ大統領の優先課題であり、費用対効果に優れ耐久性及び安全性の高いPVCは、米国上下水道システムを更新する上で鍵となる材料である」と述べた。更に同氏は、「連邦政府は今後、米国のインフラ整備に1兆ドル(約112兆9570億円)を投資することを明らかにしているものの、上下水道配管の新設だけで2兆ドル(約2259140億円)の経費が必要となる。PVC配管は、鉄製配管と比べて敷設費用を最大70%削減できるほか、運用効率性が高く使用期間も長いため、米国の上水道配管の更新に最適である」と強調した。

[1] https://www.uni-bell.org/files/Reports/Life_Cycle_Assessment_of_PVC_Water_and_Sewer_Pipe_and_Comparative_Sustainability_Analysis_of_Pipe_Materials.pdf

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