2017年11月21日に現地で報じられたところによると、シンガポール公益事業庁PUBはこの日、Water Efficiency Awardsの授賞式において、建築物向けの水効率の基準値について関連業界からの意見を求めると発表した。この賞は、高い水効率を達成した企業・団体に贈られるものであり、同賞の創設後、初めての表彰式であった。なお、表彰式はIndustry Water Solutions Forum(議長:Masagos Zulkifli環境水資源大臣)と共同で開催された。
水使用効率(WEI)の建築物向け基準値を策定
2015年以降、シンガポールでは「公益事業(水供給)規則(Public Utilities (Water Supply) Regulations)」のもとで、前年に6万m3以上の水を消費した大規模な水ユーザーを対象として、1年に1度PUBに水効率管理計画(WEMP)を提出することを義務付けている。WEMPには、水を使用する領域についても記載しなくてはならないため、こうした情報からユーザーが水の使用パターンを研究し、水効率を改善することが期待されている。WEMP提出に際しては、水効率指標(WEI)もあわせて算出することとなっている(WEIが低いほど、水効率が高い)が、今回、このWEIについて建築部門(オフィス、ホテル、商業施設棟)を対象とした推奨値が策定された。また、水を再利用する産業においては、そのリサイクル率が計算される。
建築物の水効率を高めるベストプラクティス集を発行へ
さらにPUBは今回、「水効率 – 建築物のベストプラクティスガイド(Best Practice Guide for Water Efficiency – Buildings’)」をまとめ、この内容をさらに改善するため、産業界からの意見を募集すると発表した。本ガイドの最終版は2018年に発行される予定である。また、適用が可能であれば、他部門における水効率基準値も徐々に策定されていくと見られている。PUBの給水局長Michael Toh氏は、「シンガポールにおける家庭用以外の水需要は、2060年までに現在の55%から70%に増加すると予想されています。このことから、工業用水の使用の管理は優先的な課題です。WEMPから得られたデータから、PUBは、さまざまな分野の基準値やベストプラクティスを設定するための知見が得ることができます。さらに我々は産業界と協議・協力してこのガイドを改良し、水管理に携わるユーザーが、水効率の高い建築物の設計、保守、運用に関する知識を得ることができ、より高い水効率を目指せるようにしたいと願っています」
上記の「水効率 – 建築物のベストプラクティスガイド」は以下よりダウンロード可能。
https://www.pub.gov.sg/Documents/Best_Practice_Guide_Water_Efficiency_Buildings.pdf
冷却塔における水の節約についても指針を発表
一方で、PUBは大規模な水ユーザーの消費量の25%を占める冷却ニーズのための水管理の改善を支援するため、「冷却塔における水の節約に関する技術指針(Technical Reference for Water Conservation in Cooling Towers)」も発表した。これにより、デベロッパーやビルオーナー、管理代理店に、優れた冷却塔管理に関するガイドラインとベストプラクティス、および施設内の関連機器の適切な運用と保守についての指針が提供されることになる。水政策研究所のCacilia Tortajada博士(シニア・リサーチ・フェロー)は次のようにコメントした。「ベストプラクティスと部門別基準値には、非常に大きな価値があります。企業の戦略的計画の一環としての自己評価を行う上で、これらは不可欠です。各企業は、これらを用いて自らの位置づけ、強みと弱み、その理由を理解し、効率を改善するための最良の方法について、認識を深めることができます。また、ベストプラクティスガイドは、新規参入者が設計段階で水効率の良い対策を構築し、適切な水管理実務を立ち上げる上での貴重な指針となるでしょう」
上記の「冷却塔における水の節約に関する技術指針」は以下よりダウンロード可能。
https://www.pub.gov.sg/Documents/TechnicalReference_WaterConservation_CoolingTowers.pdf
さらに、WEIで上位10%に入る(すなわちWEIが最も低い)、またはリサイクル率が最も高い企業には、2年に一度、PUBによりWater Efficiency Awardsが授与される。2017年は、7つの部門(オフィス、小売り、ホテル、ウェハ製造、製油所、学校、および不動産)計27の組織が受賞した。現在、大企業による水のリサイクル率は20%となっており、持続可能な水の供給と管理のためにはこれを高める必要がある。PUBでは、大規模な水ユーザーと積極的に協力し、独自の工業用水ソリューションプロジェクトを通じて、水管理を改善したい企業を支援している。これまでに19の工業用水ソリューションプロジェクトが実施され、毎日約500万ガロン、年間でオリンピックサイズのスイミングプール2700杯分の水が節約されている。この他現在、12のプロジェクトが実施されている。