英国の河川水塊の86%が「良好な生態学的状態」に達せず――環境庁の水質状態報告

英国環境庁が2018年2月19日、報告書“The state of the environment: water quality”[1]を発行した。本報告書は、英国環境庁がイングランドの水質評価と、直面する問題点を整理分析したものである。そのおもな結論は以下のとおり。

  1. 2016年には、英国の河川水塊の86%が良好な生態学的状態に達していなかった(達していたのは14%)。その主な理由は、農業や地方の土地管理、水産業、都市と輸送の圧力によるものである。2021年までに、河川水塊の21%を良好な生物学的状態に引き上げるのが次の目標である。
  2. 2015年に河川で実施したすべての魚類試験の不合格の38%、また無脊椎動物試験の不合格の61%の原因は、まさに水質の問題にあった。
  3. 水産業が河川水域に排出した汚染物質による水質負荷は近年、下がってきている。1995年以来、最大7割削減された。
  4. 水道会社による深刻な水質汚染事案の発生件数は過去10年間、ほぼ同じ水準に留まっている。毎年約60件の事案が起きている。これは1週間に1件を上回るペースである。
  5. イングランドの河川水塊を2016年に評価したところ、その55%は、リンに関して良好な状態といえなかった。
  6. 地下水水塊の半分近くは、2021年までに良好な化学的状態に達しない見込みである。飲料水用に保全されている地下水の場合、良好な化学的状態に達成しない原因の65%は、硝酸塩のレベルにある。
  7. 水浴び場の水質は過去30年で改善されてきている。2017年には、98%が最低基準をクリアし、また65%が優良な状態に達していた。
  8. 人口の増加、気候変動、新しい化学物質、プラスチック汚染、ナノ粒子、シェールガス採掘のための水圧破砕、これらはすべて、今後の水質にとって脅威となる可能性がある。地表水に含まれる化学物質として、とりわけ関心を呼ぶのは、殺虫剤イミダクロプリド、抗生物質クラリスロマイシン、抗炎症ジクロフェナック、人や家畜からのエストロゲンである。

環境庁のEmma Howard Boyd長官は、「水質改善目標の達成のため、環境庁は他の関係者と密接に協力していくつもりであるが、必要とあらば、水質汚染者の告訴もちゅうちょしない」とコメントした。

[1] https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/683352/State_of_the_environment_water_quality_report.pdf