カリフォルニア州政府機関の行政監査を行うカリフォルニア州監査室(California State Auditor)は2018年3月中旬、雨水排水に含まれる有害物質の削減に向けた州政府や地方自治体による取り組みを分析した結果報告書を発表した。同報告書では、雨水排水に含まれる有害物質を制御するにあたり多大な遵守コストが必要となるものの、コスト算出額が必ずしも正確ではなく不要な経費も含まれていると、指摘している。
米国では一般的に、産業排水や生活排水などの汚水処理とは異なり、専用設備を介して雨水排水は未処理のまま地域の水域に放流されている場合が多い。そのため、連邦水質浄化法(Clean Water Act)は、地域の水域へ放流されうる雨水排水に含まれる有害物質を制限する規制を策定することを州政府に対して義務付けている。また、郡政府や市町村などの地方自治体に対しては、雨水排水許可を取得することを規定している。同許可に基づき、カリフォルニア州内に位置する9カ所の地域水質管理委員会(Regional Water Quality Control Board)は、雨水排水に含まれる有害物質を制御する計画(有害物質制御計画)を策定する。これを踏まえて、地方自治体は同計画を施行することが義務付けられており、有害物質が安全基準まで低減されていることを測定する必要がある。カリフォルニア州では、州水資源管理委員会(State Water Resources Control Board:SWRCB)が規制当局であり、地域水質管理委員会とともに、雨水排水の汚染を防止する役割を担っている。
今回、カリフォルニア州監視室は、SWRCBに加えて、ロサンゼルス地域、サンフランシスコベイエリア、及び、セントラルバレー(中央部)の3カ所における地域水質管理委員会による雨水排水の有害物質の管理に対する取り組みを分析した。その結果、以下の主な内容が明らかになった。
- 地方自治体に課せられる有害物質制御計画の要件を満たす上で必要となる遵守コストの積算根拠等が不十分である。
ロサンゼルス市当局は、1件の有害物質制御計画を満たすために今後3年間で合計880万ドル(約9億3445万円)が必要であると積算している。また、別の異なる同制御計画を遵守するには、ロサンゼルス都市圏内に位置する41カ所の地方自治体が14億ドル以上(約1486億円)のコストを負担する。これに対して、カリフォルニア州監査室が合計20件存在する有害物質制御計画を審査した結果、8件に及ぶ同制御計画では、地域水質管理委員会が実施した遵守コスト算出方法が不適切である、または積算根拠に用いた計算方法が文書化されていない。また、残りの12件の有害物質制御計画に関しては、地方自治体が同制御計画の要件を満たすために過去負担した全てのコストを、同委員会は考慮していない。
- 地方自治体が負担すべき遵守コストを積算するにあたり、地域水質管理委員会は、一貫性ある情報を活用していない。
SWRCBは、活用した情報に矛盾があることを認識しているものの、地方自治体が負担するコストの追跡方法や報告手法に対してガイダンスを提供していない。1カ所の地域水質管理委員会では、連邦法によって義務化されているものの、地方自治体からコストに関する情報収集が実施されていない。
- SWRCBや地域水質管理委員会は、古い情報を活用、または地域の水域に関する十分な情報を入手せずに、有害物質制御計画を策定した。そのため、同計画を修正する必要があり、地方自治体が負担すべき不必要な遵守コストが発生する結果となった。
- SWRCBは州全体の政策として、地方自治体に対してゴミを水域に放流することを禁止している。そのため、雨水排水に含まれた有害物質の抑制ではなく、ゴミの低減に対して地方自治体のリソースが配分されている。
1ドル=106.19円で換算