2018年3月18~23日にブラジルの首都のブラジリアで開催された世界水フォーラムの開催に向けて、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)と米州開発銀行(IDB)が、ラ米・カリブの水に関する地域報告書サマリーを発表した。国の経済及び福祉に水が果たす役割は、水管理だけでなく経済、社会、地理的条件や、水資源に対する政府の取り組みなど様々な要因に関係することを前提として、以下の内容をまとめたものとなっている。
ラ米・カリブ地域の面積は世界の13%に相当し、世界の人口の6%しか住んでいないが、世界の3分の1の水資源が存在する。このため人口一人当たりの水資源量は、世界平均が6000m3なのに対してラ米・カリブ地域では2万2000m3となっているが、地形が変化に富んでいるため乾燥した砂漠地帯と多雨地帯が共存し、特にメキシコ、ドミニカ共和国、チリ、ペルーでは乾燥地域に人口が集中して都市化が進んでいる。一方経済成長により生活水準と教育レベルが向上して中産階級の層が厚くなり、政治的にも民主化が進んで公共事業プロセスの透明化や市民の参加も推進し、生活水や農業用水、鉱山開発用水の需要が増える中、それらに関する法規の整備が進んでいない。
報告書では、このような状況におけるラ米・カリブ地域での今後の課題として、以下を挙げている。
- 現在65%の飲料水網普及率と22%の下水道普及率を上げ、さらに水やサービスの質を改善すること。例えばホンジュラスでは上下水サービス供給は都市部で一日5-20時間、農村部で16時間であり、ペルーでは一日22時間以上の都市はわずか19%、メキシコでは毎日飲料水の供給がある家庭はわずか14%となっている。また飲料水の質に関しては、グアテマラやドミニカ共和国では、飲料水の質の基準を満たしているのはわずか30-40%で、メキシコでは飲料水の14%は消毒処理されていない。
- 政治力を強化すること。国際法の影響で水に関する基本法の改正が進んでいるが、その適用規則の整備が不十分で効果的に施行されていない。
- 資金の確保。水管理に必要な資金が不足している国が多い。民間資金の投資を奨励する環境が必要。
報告書完成版は、2018年中に発表される予定となっている。
報告書サマリーは、以下のサイトでダウンロード可能。
https://www.cepal.org/sites/default/files/news/files/informe_regional_america_latina_y_caribe.pdf