ブラジルの下水及び水源保護事業関係会社による民間団体TRATA BRASILが2018年11月に発表した報告書「ブラジルの下水処理普及による経済社会的恩恵2018年版」によると、ブラジルの飲料水普及は、2004年には80.6%だったのが2016年には83.3%に上昇し、下水処理普及は2005年から2016年で38.4%から51.9%に改善した。しかし2016年時点の下水処理普及率は、イラクの86.5%やモロッコの76.7%、また南米ではチリの99.1%、メキシコの85.2%、ペルーの76.2%よりも低く、ボリビアの50.3%と同じレベルとなっており、下水処理の完全普及までにはまだ課題が多い。
下水処理普及率が低く衛生状態が悪いことで、ブラジルの寿命はラテンアメリカ平均の74.9歳よりも低い74.4歳となっている他、以下の現状が報告されている。
- ブラジル北部の10人に9人は下水道へのアクセスがなく、飲料水の約半分が喪失している。
- 北東部の4人に1人は下水処理へのアクセスがなく、飲料水の半分が喪失している。
- 南東部の状況は比較的良いが、それでも住民の4%は下水処理へのアクセスがない。
- 南部では下水処理へのアクセスがある住民は5%のみであり、半分以上の汚水が処理されずに水源に流されている。
- 中西部では下水処理へのアクセスがある住人は5%となっているが、汚水の約半分は処理されずに水源に流されている。
報告書では、下水処理の普及率が低いことの弊害として、寿命が低いことの他、下痢や嘔吐などの病気の蔓延、病気による欠勤で生産性が低下、学校欠席による学業への影響、下水道がない区域の不動産価値の低下、観光不振が挙げられている。観光への影響に関しては、住民1000人あたりの外国人観光客の数は、近隣のアルゼンチンが138人、チリが207人、キューバが261人なのに対し、ブラジルはサッカーのワールドカップがあった年でもわずか31人となっている。
報告書によれば、今後20年間で下水処理を完全普及する為には、4億4400万レアル(1億1800万米ドル相当)が必要とされている。
「ブラジルの下水処理普及による経済社会的恩恵2018年版」は以下よりダウンロード可能。
http://abconsindcon.com.br/wp-content/uploads/2018/11/Relat%C3%B3rio-Benef%C3%ADcios-do-saneamento-no-Brasil-v.-01-11-2018.pdf
また、上記報告書のサマリーは、以下のサイトからダウンロード可能。
http://www.tratabrasil.org.br/images/estudos/itb/beneficios/Press_Release_-_Benef%C3%ADcios_do_saneamento_no_Brasil.pdf