水道水安全ガイドラインの策定を巡り米国の州間の格差が広がる

米国では最近、水道水(飲料水)のPFAS汚染が深刻化しつつあることから、数多くの州政府では、連邦政府とは異なる独自のガイドラインが策定される傾向にあるという新たな調査分析が2019年1月上旬に発表された[1]。同調査では、現行の連邦ガイドライン(健康勧告値)に法的拘束力を持たせる必要があるほか、汚染された水道水が供給されている住民の健康を保護するため、飲料水への化学物質の含有値を厳格化するべきであると、研究チームは指摘している。

米国では1950年代以降、PFOA(パーフルオロオクタン酸)やPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)といった化学物質PFASは、焦げ付き防止コーティング、汚れ付着防止剤、泡消火薬剤などの様々な製品に広く使用されてきた。しかし、これらの物質が様々な疾病を引き起こす要因であることが判明して以降、PFOAやPFOSが含有された製品の生産は米国で禁止された。しかしこれらの化学物質は分解されにくく、環境中や人の体内に長期間に亘り蓄積するほか、環境中を移動するため水道水の汚染を引き起こしている。また米国内では現在、これらの化学物質は製造されていないものの、海外で生産された多くの製品に含まれている。製造業者はPFOAやPFOSの代替として他のPFAS物質を使用しているものの、これらのPFAS物質はPFOAやPFOSと同一の化学特性を有している場合もある。

米ワシントン州に位置するウィットマン大学(Whitman College)研究チームは、健康被害を引き起こさない範囲で認められている、水道水へのPFOA及びPFOSの含有値を規定した複数の州政府が策定するガイドラインや、これらの化学物質が水源地にて特定された際に取るべき必要な措置を検証した。検証にあたり、Silent Spring Instituteやノースイースタン大学(Northeastern University)と共同で、Interstate Technology and Regulatory Councilが2018年6月に公開した情報を収集した。さらに、州政府のウェブサイトから公開文書を参照するとともに、州政府環境・健康担当部局へのコンタクトを通じて情報入手を行った。

検証の結果、全米7箇所の州政府が独自のPFOAやPFOSの汚染値を導入または提案しており、このうち3つの州政府は、連邦政府(米環境保護庁:EPA)が設定した健康勧告値よりも厳格な水準を設定していることが明らかとなった。また一部の州政府は、水道水の汚染被害が実際に発生した後に、ガイドラインを策定していた。州政府が策定するガイドラインの内容は州により大幅に異なる。EPAによるPFOA及びPFOSを対象とした健康勧告値は1リットル当たり70ナノグラム(70ng/L)であるのに対して、州政府の設定値は、13ng/L(ニュージャージ州)から1,000ng/L(ノースカロライナ州)と、大きな格差があった。また、他のPFASを対象としたガイドラインを現在策定している一部の州政府も見られた。全ての州政府が独自のガイドラインを策定または汚染された水道水を浄化するリソースを有していないため、PFOA及びPFOSを対象とした法的拘束力のある連邦基準が現時点で存在していないことが、水道水の安全性を巡り全米間で格差を生んでいるほか、その格差がより一層広がりつつあると、同研究チームは強調している。

[1] Alissa Cordner, et al., Guideline levels for PFOA and PFOS in drinking water: the role of scientific uncertainty, risk assessment decisions, and social factors, Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiologyvolume, doi: https://doi.org/10.1038/s41370-018-0099-9
https://www.nature.com/articles/s41370-018-0099-9

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