南カリフォルニア都市圏水道公社は2019年3月12日の理事会において、ミード湖の水位が劇的に低下した場合に追加の節水義務を負うことについて全会一致で承認した。カリフォルニア州内で難航している干ばつ緊急計画の合意を前進させるために別地区の義務を負担した形だ。
コロラド川流域ダムの貯水量が激減、米内務省が干ばつ緊急計画の策定を要求
南カリフォルニア都市圏水道公社はロサンゼルスやサンディエゴなど南カリフォルニア地区の1900万人に水を供給する。その水源の一つがコロラド川だ。コロラド川は米7州にまたがる主要河川で4000万人の生活と500万エーカー(約200万ha)の農地を支える貴重な水源である。しかし2000年以降の20年に及ぶ干ばつ、気候変動そして水需要の高まりにより、コロラド川の流量とダムの貯水量は共に激減している。
このような状況を踏まえ米内務省は2017年12月、ワイオミング州、コロラド州、ユタ州、ニューメキシコ州、アリゾナ州、カリフォルニア州、ネバダ州の7つのコロラド川流域州に対し、2018年末までに干ばつ緊急計画を策定するよう求めた。これはコロラド川の主要なダム湖であるミード湖とパウエル湖の水位が極度に低下するリスクを減らすことを目的とするものだ。
カリフォルニア州内での干ばつ緊急計画の合意が難航
下流域に位置するカリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州の3州は干ばつ緊急計画の下、ミード湖が特定の水位になった際に一定量の水を貯留することに合意している。カリフォルニア州では、水位が1045フィート以下になると年間20~35万エーカーフィート(約2億5000万~4億3000万m3)の節水が必要となる。これを南カリフォルニア都市圏水道公社など各地域の水道事業者で分担する調整が行われたが、コロラド川の最大のユーザーであるインペリアル灌漑地区は合意に難色を示してきた。
インペリアル灌漑地区はコロラド川からの灌漑用水による農業が盛んな地域であり、下流には観光地としても有名なソルトン湖を有する。同地区の当局によると、水の供給量が減らされた場合ソルトン湖の塩分濃度が上昇し生息する魚の数が減少するという。同地区はソルトン湖の環境保全費用として2億ドル(約223億円)もの支援を米農務長官に要請しており、認められない限り干ばつ緊急計画には合意しない構えだ。
しかし連邦政府が定める2019年3月19日の期限までにこの支援が認められる可能性は低い。南カリフォルニア都市圏水道公社は今回の理事会において、インペリアル灌漑地区に代わり必要に応じて25万エーカーフィート(約3億1000万m3)の節水を負担することを決定した。「ソルトン湖の環境が維持されるような方策の検討については支持したいが、だからといってその問題が解決されるまで干ばつ緊急計画を棚上げにすることはできない」と同社ゼネラルマネージャーのJeffrey Kightlinger氏は語る。
カリフォルニア州とアリゾナ州を除く5州は既に干ばつ緊急計画に署名済みである。米内務省開拓局長Brenda Burman氏によると、自主的な合意が完了しない場合は、コロラド川を水源として利用する地域間で節水量をどのように分担するか連邦政府側で決定する見込みだという。