ドイツ環境庁、豪雨洪水対策を改善するための包括的な10の行動分野を勧告

ドイツ連邦環境庁が2019年5月、『豪雨対策及び水害に脆弱な都市開発のための措置―ドイツにおける豪雨対策の現状分析と今後必要な対策の特定』(下記URL)を発行した。
https://www.umweltbundesamt.de/sites/default/files/medien/1410/publikationen/2019-05-29_texte_55-2019_starkregen-stadtentwicklung.pdf

ドイツでは近年、豪雨による洪水が繰り返し発生し、夥しい損害をもたらしている。2016年5月と6月に立て続けに発生した暴風雨だけでも、被害額が8億ユーロ(約864億円)にものぼり、近年で最悪の惨事となった。このような最新動向を踏まえ、本報告書は、数多くのドイツの既存の豪雨対策事業を調査分析するとともに、多機能土地利用分野で手本となる豪雨対策や、豪雨ハザードマップ等を詳しく検討した。そのうえで、ドイツの豪雨対策を改善するための包括的な行動分野を、次の10項目にわたって勧告した。

(1) これまで豪雨(heavy rain)という用語が、別々の省庁間でバラバラに使われてきた。この際、あらゆる分野で受け入れられるような統一的な定義を定めるべきである。

(2) 住民の間の意識をさらに高めるため、「河川の氾濫」と「豪雨による洪水」の違いを伝え  る必要がある(洪水は、近くに河川がなくとも短時間のうちに起こりうる)。

(3) 住民側の自主的対策を強化すべきである。自主的対策を講じる余地、コスト、その効果に関する住民側の知識を向上させなければならない。

(4) 建物のプランナーや設計者も、ガイドライン、ルール、法的要件等を通じて、豪雨問題をよく自覚して、予防対策に大きな貢献をしなければならない。

(5) 豪雨事象、それによる損害、その環境影響の規模や頻度をよりよく定量化するため、過去の豪雨事象を記録したデータベースを整備すべきである。

(6) ターゲットグループ向けの豪雨ハザードマップを作って公表すべきである。必要なら、それを法的に義務化すべきである。

(7) 豪雨の予測や早期警報のために使える時間は、河川氾濫の場合よりもかなり短い。対策本部が対応する時間はほとんどない。早期警戒システムをさらに充実させるべきである。

(8) 豪雨対策事業や住民の自主的対策を財政面で支援することで、措置を実施するモチベーションを高めるべきである。

(9) 豪雨リスク管理を円滑に実施するには、措置を実施する権限や予算措置のルールの点で、州と市町村間の、また市町村内の協力をよりよく調整する必要がある。

(10) 豪雨の分野にはまだ不確実な点があることから、適切な研究事業を通じて知識面のギャップを埋めていかなければならない(豪雨の予報、気候変動の影響、地域的分布等)。