グリーンピース、中国・南京大学と共同で、国内の工業団地における汚水処理に関する報告書を発表――90%の省が抱える問題を指摘

2019年5月、国際環境NGOグリーンピースと中国南京大学生態環境研究院は、共同で「中国工業団地における汚水処理管理についての研究報告書」を発表した[1]。2019年5月15日に完了した第2回中央生態環境保護監査の報告によると、現在、中国全土の90%の省は、いずれも工業団地の汚水管理における問題を抱えている。こうした問題に関して、上述の報告書では、汚水管網の建設の遅れ、管理や調整における不備、合理性に欠ける排出標準などの具体的な問題点について指摘している。以下は、それぞれの問題点の概要である。

汚水管網の建設の遅れ

建設資金や土地収用に伴う移転、都市計画などにより、多くの工業団地では汚水管網の建設を段階的に実施しているため、工業団地内のすべての関連企業に対する配管網接続を短期間で実現するのは困難な状況にあり、汚水管網が未完成の状態で生産を開始する企業も存在している。一例として、中国の貴州省では、128箇所の工業団地における汚水処理場のうち、70%の汚水管網の建設が遅れており、処理工程も基準を満たしていない状態にある

管理や調整における不備

工業団地の汚水処理の管理プロセスが複雑であることに加えて、現地の環境部門や都市建設部門、工業団地管理委員会など複数の行政機関が関係しているため、審査・承認や管理監督を担う部門間での情報の伝達がうまくできておらず、工業団地と上級の環境管理部門間における権利や責任も明確ではないなどの問題が存在するため、企業の汚水に対する効果的な管理監督が困難な状況にある。


図 工業団地内での汚水処理の問題点
(出典:中国工業団地における汚水処理管理についての研究報告書)

 

合理性に欠ける排出標準

現在、中国では、工業団地の汚水処理場を対象にした排出標準は制定されていない。工業団地の集中処理における混合工業廃水の汚水処理場では、その大部分が「都市汚水処理場排出標準」で最も厳しい標準である1級A標準に基づき排出しているが、同標準に従って設計された汚水処理場では、一部の業界標準の要求を満たすことができない。加えて、同標準では、工業企業における特徴的な汚染物質の指標も規定されていない。こうした排出標準に関する問題により、企業の前処理にかかるコストや工業団地の汚水処理場におけるコストなどの負担は増大している

同報告書では、上述の問題を解決するため、税収の優遇措置などにより、民間資本による工業団地の汚水処理インフラ建設を支援するとともに、各管理監督部門間における責任の明確化を図るよう各省の政府に提案している。

[1] 工业园区污水处理管理政策研究报告
https://www.greenpeace.org.cn/wp-content/uploads/2019/05/%E5%B7%A5%E4%B8%9A%E5%9B%AD%E5%8C%BA%E6%B1%A1%E6%B0%B4%E5%A4%84%E7%90%86%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%94%BF%E7%AD%96%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%8A%A5%E5%91%8A.pdf

タグ「」の記事:

2020年2月23日
米州水規制規制機関協会ADERASA、上下水法規に関する第12回イベロアメリカ・フォーラム開催
2020年2月1日
ブラジル・リオデジャネイロの上下水会社CEDAEの飲料水の水質問題で、民営化プロセスが困難になる可能性あり
2020年2月1日
ラ米ではPPPによる上下水部門への民間の参加が必要だが、法整備などの面で課題あり
2020年1月15日
RCAP、農村地域を対象とした医薬品の摂取過剰の解決と水質改善を目的としたパイロットプログラムを実施
2020年1月9日
下水に含有する薬剤の効果的な除去方法の特定――活性炭とオゾン処理を導入