米環境保護庁(EPA)は2020年5月14日、州政府や公共水道事業者と共同で、汚染軽減と公衆の健康保護に取り組んできた結果、飲料水中の過塩素酸塩を大幅に減らすことに成功したと発表した。EPAは今後も、これらのパートナーとともに、飲料水中の過塩素酸塩の汚染改善を進めていくことを明らかにした。
EPAは、飲料水中の過塩素酸塩を規制する決定を下した2011年以降、州政府や公共水道事業者とともに、過塩素酸塩の含有量の低減に取り組んできた。過塩素酸塩の特定、定期的な測定、含有量の低減といったプロセスを段階式に進めた結果、飲料水中の過塩素酸塩の汚染レベルが大幅に改善された。EPAは、その主な要因として以下の取組みを挙げている。
- 水道水の消毒として使用されている過塩素酸塩の保管や取扱い手順の改善
- 過塩素酸塩の除去活動を60カ所に上るスーパーファンド・サイトにて実施
- マサチューセッツ州やカリフォルニア州などの州政府による飲料水中の過塩素酸塩の規制
- 特にネバダ州レイクミード上流部のコロラド川下流域に隣接する地下水など、過塩素酸塩の汚染サイトにおける連邦政府や州政府による汚染除去活動
背景情報
過塩素酸塩は、特に米国南西部の乾燥地域では自然界にも存在する化学物質ではあるが、ロケット燃料、爆薬、自動車用緊急保安炎筒、花火などの製造に使われている。また、浄水場で水道水の消毒として使用されている次亜塩素酸塩溶液や、肥料等の製造に活用される硫酸塩の中に不純物として存在しており、健康被害が懸念されてきた。そのためEPAは2011年2月に、安全飲料水法(SDWA)に基づき汚染物質として飲料水中の過塩素酸塩を規制する判断を下した。
それ以降、EPAは規制化を進めてきたものの、2016年、過塩素酸塩の飲料水基準の提案と最終決定が遅延しているとして、環境保護団体Natural Resources Defense Council(NRDC)から訴訟を起こされた。裁判所の調停による合意の結果、EPAによる規則策定の日程が明らかになり、2019年6月には過塩素酸塩の飲料水基準(規則)案が発表された。同規則案では、飲料水中における過塩素酸塩の最大汚染レベル(MCL)及び最大許容濃度目標(MCLG)を1リットル当たり56マイクログラム(0.056 mg/L)と定めている。EPAは更に、飲料水中に含まれる過塩素酸塩を定期的に測定し、報告することを水道事業者へ義務付けた。
同規制案に対するパグリックコメントは2019年8月26日まで募集された。寄せられた意見を踏まえた最終規則は、2020年6月中に発表される見込みである。
【関連URL】
2019年6月26日付け、官報による過塩素酸塩の飲料水基準(規制)案:
https://www.federalregister.gov/documents/2019/06/26/2019-12773/national-primary-drinking-water-regulations-perchlorate