中国で大きな事業を展開しているフランスの大手廃棄物・水ビジネス企業Suez Environnemnetは、中国株式市場における最近の株価暴落が廃棄物および水ビジネスの分野における合併・買収(M&A)のスピードを鈍らせ、「非現実的なまでの企業評価額」に歯止めがかかる可能性があるという見かたを示している。Suezはかなり以前から、新総建集団(NWS Holdings)との合弁会社である中法水務(Sino-French Water)を通して中国の20都市で事業を展開しており、2000万人に上下水道サービスを提供している。
近年、Suezと、それよりも規模の大きい同じくフランスのVeoliaはともに、中国の新興企業から競争を仕掛けられることが多くなってきた。これらライバル企業は、資金調達の容易さから企業買収を重ねて成長することができたのである。
Suezの国際部門の幹部の見かた
Suezの国際部門を率いるMarie-Ange Debonは、最近の株暴落が中国のライバル企業の買収意欲をそぐのではないかとの見かたを示している。「会社によっては外部成長戦略を進めるなかで買収相手を過大評価したところもあるが、こうした傾向には、中国の株価が下落しているいま、ブレーキがかかる可能性がある」とDebonは言う。中国の中央銀行が金利と金融機関の預金準備率とを引き下げる方向に動いているが、それによって中国のライバル企業の競争力が増すとは思えず、実際はその逆になるのではないかというのが、Debonの見かたである。「中国企業にはこれまで幅ひろい資金調達能力があったが、現在の状況は、非現実的なまでの評価額での企業買収のスピードを弱める方向にはたらくだろう」とDebonは言う。
今後は規制強化などをバネに
Debonによれば、アジアの競合企業はいまのところおもにアジアで事業を展開しているが、Suezとしては、地域や分野によっては中国企業を――たとえば、アフリカでは中国の土木企業を――将来のパートナーと見ているという。中国の経済は減速しているが、Suezにとってそれは重荷ではないという。中国の環境問題はきわめて深刻であり、ことに、2015年8月に天津で起きた化学品倉庫の大爆発がきっかけとなって環境法規制の強化が見込まれるからだ。中国におけるSuezの事業にとって、規制はこれまでも重要な成長要因のひとつだった。Debonはこう言う。「天津の事故でわれわれが考えているのは、政府や地方の規制当局が今後、環境面での取り締まりを強化し、水処理や廃棄物処理の基準の数をさらに増やすだろうということだ」
中国経済の減速によって、ヨーロッパの輸出産業は高級品や高価なサービスへのシフトを加速しつつある。これは、Suezが有害廃棄物のハイテク処理への注力に際して予想していた傾向だ。Suezは現在、上海で最大規模の有害廃棄物処理施設を運営しており、また、上海に近い南通では、新たな有害廃棄物処理プラントを建設しているところである。
Suezと新総建集団は2015年7月、重慶市水務資産(Chongqing Water Assets)とDerunという合弁会社を設立した*1が、これも規制強化をバネに成長をめざすSuezの戦略に沿ったものだ。「Derunは、中国で成長しつつある環境関連ビジネスに食い込むための投資のプラットフォームになるだろう」とDebonは述べている。
*1 EWBJ55号に関連記事有り「Suez Environnement社と中国NWS社、中国で水・廃棄物管理専門会社の設立へ」