インド政府、複合年賦方式PPPモデルで下水システムの改善を加速へ

ナレンドラ・モディ首相ひきいるインド政府は、Namami Gangeと呼ばれるガンジス川浄化プログラムの一環として、下水システムの改善に複合年賦方式の官民パートナーシップ(PPP)モデルを導入することを閣議決定した。これは、Namami Gangeプログラムの実施段階におけるひとつのパラダイム・シフトともいえる決定で、この複合年賦方式PPPモデルの採用は、下水システムの事業成績、効率、実行可能性、および持続可能性の確保をめざしたものである。このPPPモデルでは、政府が設備投資額の最大40%を建設工事の節目ごとに分割で支払い、残額を民間事業者が最長20年の契約期間にわたって年賦で支払う

特別目的事業体の設立

政府は、この複合年賦方式モデルの特殊性に鑑み、また、持続可能な範囲での将来の規模拡大を見越して、こうしたPPPプロジェクトの計画立案、立ち上げ、コンセッショネアの募集、実施状況の監視のほか、国家ガンジス川浄化ミッション(NMCG)という大方針のもとでの適切な政策に沿って処理済み下水の市場開発などをおこなう特別目的事業体(SPV)を設立する。2013年の会社法にもとづいてつくられるこのSPVは、プロジェクトに必要なガバナンスの枠組を提供するとともに、機能面での独立性を保証するものである。

このSPVは、個々のプロジェクトごとに、地元の州政府および地方自治体と三者合意覚書を交わす。この覚書の目的は、汚染者負担の原則にしたがった利用料金の徴収や、より厳格なモニタリングとガイドラインにもとづく地下水や地表水の飲用以外の利用制限などについて、現状を改革して新たな規制を導入し、それによって処理済み下水の再利用を促進することにある

水資源・河川開発・ガンジス再生省を中心とした動き

処理済み下水の市場開発を加速するために、水資源・河川開発・ガンジス再生省は、下水処理場から出る処理済み下水を可能なかぎり買ってもらうための覚書を鉄道省と交わした。これはこの種の覚書としては初めてのものである。水資源・河川開発・ガンジス再生省は同様の覚書を電力省、石油・天然ガス省、商工業省などとも交わすことにしている。

これは将来を睨んだ政府の動きで、処理済み下水の市場がひろがって水利用の構造改革が進めば、それがひいてはプロジェクトの成功につながるのを見越してのことである。すなわち、こうした市場開発が進めば、プロジェクトの初期の金融負債が減り、Namami Gangeプログラムのもとで割り当てられる予算の範囲内でより多くのプロジェクトに着手できるようになる。また、コンセッションの全期間を通じて民間の事業参加者の持ち分を拡大させれば、長期にわたって途切れることのない操業が保証されるだろう。さらに、下水システムの事業成績の基準を民間事業者が支払う年賦額とリンクさせることにより、処理済み下水の水質を適正に保つという目標を確実に達成することができる。PPPのこうした手法は、汚染者負担の原則にもとづく利用料徴収の根拠にもなり、地方自治体がしだいに力をつけていくのにも役立つだろう。処理済み下水の市場開発はまた、河川からの取水需要の低減につながり、その結果としてガンジス川の流量を増やすことができる。こうしたいくつものステップをかさねることにより、水全般の責任ある利用がひろまり、長期的に見れば、インドで将来起こるとされている水不足を緩和する道がひらけてくるだろう。

新モデル導入の背景

過去において、さまざまなプログラム(ガンジス川行動計画IおよびII、国家ガンジス川流域公社、ヤムナ川行動計画など)のもとで多額の投資がなされてきたが、そこから得られた利益は望ましい水準を下回っていたと言われている。中央公害規制委員会(CPCB)によると、ウッタル・プラデーシュ、ウッタラーカンド、ビハール、西ベンガルの4州で調べた下水処理場のうち、およそ30%は稼働しておらず、94%は定められた排水基準を満たしていなかったという。

今回の閣議決定は、ガンジス川浄化をめざす過去のあらゆる取組の障害となっていた諸問題の解決をめざすものである。この閣議決定によって、インドの下水システムの全面的な改革への道が整備されてプロジェクトの実施が加速され、国が100%出資しているNamami Gangeプログラム――下水システムの改善など、さまざまな取組の中心となっているスキーム――による資金の効果的な利用が保証されることになる。

 

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