台湾、再生水資源発展条例を公布――国内での再生水利用の拡大を目指す

台湾で、2015年12月30日、「再生水資源発展条例*1」が総統令として公布された。本条例について経済部の楊偉甫次長は次のように述べている。「再生水資源発展の環境づくりのため、法制度確立の第一歩を踏み出すことに成功した。今後、次々に関連の法律を制定し、実際の工場建設の推進や再生水産業に対する支援を実施していく。安定した新水源の開発により、社会の経済発展を支えるとともに、再生水関連産業の発展も創出していきたい」楊次長の説明によると、今後半年間で経済部は、下記を含む計9本の関連法の制定に積極的に取り組む予定であるという。

  • 水不足地域の範囲の指定
  • 再生水の強制使用率と代替方法
  • 再生水の料金計算基準
  • 水質基準
  • 再生水経営事業の申請手順と監督
  • 中央政府から地方政府への経費補助

法令を制定することで、関連する対応措置の整備を図り、各業界に対して遵守すべき基準を提供し、再生水の開発や利用を本格的に始動させる。法の制定については、草案の予告をしたり、専門家や学者に意見を求めたり、地方政府および潜在的な水使用者や再生水経営業者との話し合いの場となる区画毎の説明会を開いたりすることにより、政府の要求と一致するとともに実施可能な実務が盛り込まれた関連措置を制定する。

再生水の発展に向けた法制度を確立する他にも、条例による支持を得ながら、再生水の需要と供給の調整や、実際の工場建設への積極的な取り組みを2016年下半期の重要な業務目標とする、と楊次長は語る。現在、業務推進が確定し行政院による承認を得ている再生水モデル工場は、福田、豊原、永康、安平、鳳山溪、臨海地区など6か所*2。鳳山溪工場は2016年1月に企業誘致について発表する予定で、福田工場は職権機関による提携同意書の締結を経て実現可能性の評価を実施している。今後、永康工場の同意書締結を促し、豊原工場案の調整を図る計画である。なお、現在、再生水需要者がすでに存在する供給元、または地方政府や水処理業者が関心を寄せる開発の見込みがある工場と供給先の組み合わせは、以下の通りである。経済部は、需要者と供給者の仲介業務を積極的に実施していく予定である。

  • 台中水湳経済貿易工業団地の汚水工場からの放流水を再生し、中部科学工業団地に提供
  • 桃園水資源センターから航空産業区に提供
  • 中壢水資源センターから観音工業区に提供
  • 高雄中区や臨海地域の水供給系統から大林・臨海工業区などに提供

台湾における再生水処理の現状と目標は下図の通りで、2032年には都市汚水処理場からの排水について再生水利用の拡大を狙っている。

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図 台湾における再生水処理目標
(出典:台湾 水利署よりエンヴィックス作成)

シンガポールに続いて台湾でも再生水関連産業の発展を目指す

楊次長は、シンガポールの例を挙げて次のように述べた。シンガポールでは、数十年間に渡って水源を確保し自主供給を続けており、再生水や海水淡水化などの公共用プラントの発展に力を注いでいる。国内外の各種水道事業メーカーも参入し、国内の関連設備産業が実績を検証できる機会もあり、政府と民間が協力し利益を共有している。2010年~2020年までの10年間で、アジアの水利・水道事業インフラの市場規模は、約4000億米ドル(約46兆8000億円)に達すると見込まれている。2013年には、シンガポールを拠点とする企業が13の国外プロジェクトを獲得しており、その総額は2億7400万シンガポールドル(約256億円)に達する。楊次長は、シンガポールに続いて台湾も、再生水関連産業で大きな発展を遂げることを期待している。

生産工場での排水再利用が今後の重要戦略に

大手工業企業の自社工場における排水の回収・再利用推進を目的として立ち上げたWASCO(Water Service Company)という枠組みについて、楊次長は次のように説明する。WASCOの運営で主な役割を果たすのは、資金提供者、設備提供者、業界メーカーである。水の再生利用という需要があるメーカーは、資金提供者に援助を申請する。資金提供者は、設備提供者の技術や評価を踏まえた上で、メーカーの水回収技術や経済的実行可能性について判断。実現可能と判断した場合、設備提供者に再生水プラントの工事、操作やメンテナンスを委託し、関連する設備への投資、操作やメンテナンス費用は、資金提供者が負担する。メーカーは、資金提供者と水使用契約を締結するのみで、水質が保証された条件の下、定期的に一定量の回収水を定価で使用できる。こうした枠組みによって、資金や設備の提供者が水再生業務の商機を獲得し一定の利潤を得られるだけでなく、メーカーも水道料金を節約でき水に関係するコストの削減につながるため、一石二鳥ならぬ一石三鳥の効果を得られる。新たなビジネスチャンスへとつながるこの運営モデルや、資金・設備提供者の戦略的提携モデルは、今後、経済部の再生水産業支援における重要戦略に加えられ、法政、行政、建設、業界によって全体をひとつにまとめ上げていく見込み。再生水資源発展条例制定後の再生水発展元年となる2016年の構想については、台湾経済部により策定済みであるという。

*1 http://wralaw.wra.gov.tw/wralawgip/cp.jsp?displayLaw=true&lawId=8ab8b1aa51ed2c7d0151f6cb406c003d

*2 EWBJ57号に関連記事有り「台湾水利署、水リサイクル・プラントを6基建設へ――150億台湾ドル超の予算を準備

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