台湾のフラットパネルメーカーAUO、台湾初となる排水ゼロを達成

2015年12月29日、台湾の大手パネルメーカーAU Optronics社(本社:新竹市、以下AUO)*1が製造工程排水の完全リサイクルシステムを発表した。同国初となるこの完全リサイクル技術は、高効率な蒸発装置を採用することで処理後に出る排水を98%削減し、排出されるのは固形物のみの「排水ゼロ」を実現したシステムである。またこのシステムのリリースとあわせてAUOは2020年までに水資源に関する3つの大きな目標「水の削減、水の製造、水の補充(Water Reduction, Water Creation & Water Replenishment)」を実現すると宣言した。AUOでは、こうした先を見越した積極的な水資源開発戦略により、環境面で持続可能な開発が実現されると謳っている。

AUOのCOEであるPaul SL Peng氏は次のようにコメントしている。「極端な気象条件が増す中、水不足によって生じるリスクが様々な課題と危機につながっております。しかし、AUOは環境と水資源管理における技術革新を通じ、持続可能性につながる新たな価値と機会を創出し続けています。例えば、我々は2010年に製造工程排水を完全にリサイクルする技術の開発に着手しました。同システムはこの2015年末に運転を開始し、環境保護と経済発展を両立させることが可能であると証明しました。今後は、水資源開発計画『AUO Water 2020- Water Resource Development Blueprint』に掲げる3つの目標を通じて、積極的かつ長期的な視点からの水資源の安全保障を確保していくとお約束します」また、同国の毛治国首相はこのリリースにあたって、AUOが節水技術の研究開発に長期間にわたり貢献してきたこと、および同社が製造工程排水の完全リサイクルシステムの開発を成功させたことを称えた。

AUO は2010年に製造工程排水のリサイクル技術の研究開発に着手し、要素技術については台湾工業技術研究院(ITRI)と連携して開発を進めてきた。その後、AUOは自社設計の排水完全リサイクルシステムとその建設計画を発表し、2013年から3年間かけて建設にあたってきた。2015年末、同システムが正式にリリースされ、独立したシステムを地元の業者が作り上げる成功例として業界に示された。AUOの龍壇工場に建設された製造工程排水完全リサイクルシステムは、排水ゼロを達成するため、膜分離活性汚泥法(MBR)、逆浸透(RO)、電気透析(EDR)、および蒸発器(EVP)を採用している。また、システムを最適化し統合することで、大幅な省エネルギーと汚泥の削減も実現した。これにより、製造業における先進的で環境負荷の低い水処理技術が実現されたこととなる。AUOは今後とも様々な節水および水処理技術の研究開発を続けていくとしており、水の利用効率を上げ、水道水の使用量を削減することを目指している。2015年、AUOが台湾国内の全拠点でリサイクルした製造工程排水は合計1億1200万トンに達した。これは一般家庭37万3300世帯が消費する水の量に相当する。

2020年までの目標

AUOの次なるステップは、上述の「AUO Water 2020」に掲げる3つの目標(「水の削減、水の製造、水の補充」)を2020年までに達成することとなる。ここで水の「削減」とは具体的に、TFT液晶ディスプレー(TFT-LCD)の製造に伴って排出される水を30%削減することを意味し、水処理技術/設備の高度化により実現される。水の「製造」は、台中工場で毎日1万トンの再生水を使用することを意味する。国の水資源政策を反映したこの目標により、水の供給における自律性を高める。水の「補充」は、水源に水を補充することを意味し、龍壇工場にて実現された排水ゼロ技術をベースにして実現する。自ら水消費量を削減し、またサプライチェーンに技術的な支援を提供することで、AUOはサプライチェーン全体を通じた節水の取り組みにより、環境への水の還元において台湾ナンバーワンの企業になることを目指す。

AUOは今回この水リサイクルシステムのリリースとあわせて、龍壇工場に「AUO GreenArk水資源教育館」を開設したことを発表した。この施設はAUOのソーラーモジュールと蓄電システムを採用し、低炭素の概念を実現した施設であり、水資源に関する情報提供も行う。同社によれば、この施設を公開し、ガイドツアーを提供することで、AUOの革新的な水リサイクル技術と水に関する知識を広く市民に理解してもらい、ひいては環境への意識を育て、持続可能性の概念を推し進めることが期待されるという。

*1 1.4インチから85インチまでの各種パネル/ディスプレイを製造する世界的パネルメーカー。TFT-LCDを主力とする各種液晶パネルの他、2009年からは環境分野に進出し、ソーラーパネルの製造も行っている。従業員約4万5000人。

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