UAEの現地紙が2016年3月30日に報じたところによると、連邦電力・水庁(FEWA)は、今後10年間で32億2200万Dh(UAEディルハム)(約954億円)の資金を投入し、4つの淡水化施設の建設を予定しているという。FEWAのMohammed Saleh総局長によると、水需要は2030年までに日量2億5000万ガロンに達すると予想され、この量を供給するためにも新たに4つの海水淡水化プラントの建設に着手するとのことである。建設が予定されている各淡水化プラントの概要は下表の通りである。
表 UAEにて建設が予定されている海水淡水化プラントの概要
(出典:Khaleej Timesよりエンヴィックス作成)
場所 | 投資額 (百万Dh) |
淡水化容量 (百万ガロン/日) |
建設 | 操業 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | ウンム・アル=カイワイン |
950 |
45 |
2016年H2 | 2020年 |
2 | アジュマーン |
660 |
30 |
2017年Q1 | 2020年 |
3 | ラアス・アル=ハイマ |
660 |
30 |
2022年Q1 | 2026年 |
4 | (未定) |
950 |
45 |
2019年Q1 | 2023年 |
(1 Dh ≒ 29.61円)
現在は、アジュマーン、ウンム・アル=カイワイン、ラアス・アル=ハイマ、フジャイラ、シャールジャにて27万人の消費者がFEWAに登録しており、1日の水の総消費量は1億500万ガロンに達している。しかしながら、FEWAはこのうち55%だけしか造水できておらず、残りの45%はアブダビ水・電力庁(ADWEA)からの供給で成り立っている。
EnviXコメント
FEWAが管轄している淡水化プラントは全12か所で、それぞれの淡水化容量は次の通りである。現在のところは1600万ガロン/日のプラントが最大であり、上述の今後建設が予定される4つの淡水化プラントの規模がいかに大きいものかが分かる。それだけUAEの水需要の拡大が喫緊の課題であり、水ビジネスとしての成長性がうかがえる。
図 FEWA管轄の淡水化プラントでの淡水化容量
(出典:FEWAの資料よりエンヴィックス作成)
手法 | プラント名 | 淡水化容量 (百万ガロン/日) |
---|---|---|
MED | Ajman |
9.0 |
Nakheel |
16.0 |
|
RO | Burairat |
1.2 |
Ghalilah I |
3.0 |
|
Ghalilah II |
15.0 |
|
Ajman RO |
3.2 |
|
Alzawra I |
6.0 |
|
Alzawra II |
3.0 |
|
Alzawra III |
7.0 |
|
Alzawra IV |
10.0 |
|
UAQ RO-A |
2.5 |
|
UAQ RO-B |
2.5 |
また、これらの淡水化プラントによる実際の年間造水量(単位:百万ガロン)の推移は下図の通りである。最近数年間の傾向を見る限り造水量の総量(ROとMEDの合計)に大きな変動はなく、年間で約120億ガロン前後となっており、平均すると1日当たり3200万ガロン程度であることが分かる。本記事の冒頭にあるように、2030年には1日の水需要量は2億5000万ガロンになると見込まれているため、新規の海水淡水化プラントの建設はFEWAにとっては不可欠であると言える。また、もうひとつ大きな特徴として、淡水化手法の大きな転換が挙げられる。2011年までは蒸発法のひとつである多重効用法(MED)が過半を占めていたが、2012年、2013年、2014年には逆浸透(RO)による造水量がMEDを上回っており、2014年の比率では85%を超えている。こういった点も、水ビジネスの勝機を捉える上では外せない情報であるだろう。
図 FEWA管轄の淡水化プラントでの年間造水量(左軸)およびRO比率(右軸)の推移
(出典:FEWAの資料よりエンヴィックス作成)