ベトナムで、2016年4月6日、「2050年を視野に入れた、2025年までの都市部および工業団地の排水開発計画に関する首相決定第589/QD-TTg号」(以下、本決定)が制定された。本決定は即日施行され、2009年11月20日付けの首相決定第1930/QD-TTg号に替わる。
本決定では、排水システムの発展に関するメカニズムと政策を徐々に改善することが大目標として掲げられている。そのほか、均一かつ安定性のある排水システムの普及を目的として、所轄当局によって承認された計画に合わせた排水の収集・輸送網の構築および下水処理場の建設などが規定されている。また同時に、排水の集中回収・処理システムへの生活排水の接続率を増加させること、さらに、排水システムの定期的メンテナンスの実施についても言及されている。
本決定は以下のURLよりダウンロード可能。
http://www.bacgiang.gov.vn//upload/vanban/0/sl-213-2016-1.signed-vpub.pdf
2020年までの排水システム達成目標
2020年までの詳細な目標は以下の通りである;
- 都市面積全体の70%をカバーした排水システムの構築
- 都市排水総量の約15%~20%について、環境中への排出前に、技術基準を満たした回収・処理を実現する。
- 医療排水および工業団地排水の100%について、環境中への排出前に、技術基準を満たした処理を実現する、または都市排水システムへの接続をおこなう。
- 伝統工芸村からの排水の約30%~50%について、環境中への排出前に、技術基準を満たした処理を実現する、または都市排水システムへの接続をおこなう。
そして2050年までには、都市計画と排水システムを同期させること、都市部における浸水を廃絶すること、そして、すべての排水が水源に排出される前に技術基準を満たすよう処理することを目指す。
目標達成に向けた対策は次の8分野に分けられる;
- 排水分野のメカニズム、政策の策定
- 排水システム開発の計画、企画
- 排水システム開発への投資
- 排水処理に関する技術開発研究
- 人材開発
- 排水管理組織の構築
- 教育と情報伝達
- 国際協力
都市部と工業団地での排水開発計画を実施するために、ベトナム政府首相は中央所轄都市および各省の人民委員会に対して計画を立てるよう要請した。そのほか、地方の排水計画を検査、調整して、承認された計画を展開するプログラムを立てる。それと同時に、建設省およびその他の省と協力して、持続的な排水システム開発に向けて、提出された計画を実施する。
なお、ベトナム商工省が発表している都市排水と工業団地排水の今後の予測は下図の通りである(2015年~2030年は予測)*1。今のところは都市排水の方が工業団地排水よりも多いが、今後は後者が急激に増加し、2020年代後半にはその排水量が逆転するものと見込まれている。
図 ベトナムにおける都市と工業団地からの年間排水量の予測
*1 https://www.env.go.jp/air/tech/ine/asia/seminar/files/H250220/3_Tam.pdf