GE、水処理事業の売却を検討

米大手総合メーカーGEは2016年10月31日、同社の石油・ガス事業と米油田採掘サービスBaker Hughesの統合発表に併せて、水処理事業の売却を検討していることを明らかにした。水処理事業の売却は、長期的な成功に向けた更なる投資と成長拡大を狙った戦略的決断であるとGEは主張している。2017年中盤までに同部門の売却取引を完了する見込みである。

GE Power, Water & Distributed PowerのCEO兼社長であるHeiner Markhoff氏は、「GEが展開する水処理事業は、ポートフォリオや製品・サービスの多様性と高度な専門性において、業界の先駆企業として認知されている。このように我々が構築してきた基盤を通じて、将来のスマートウォータに向けたグローバルな持続可能性とイノベーションを促進し、顧客の効率性を向上させることで、同事業を更に成功へと導く。水処理事業は強固であり、将来の更なる成功を継続させる」と述べた。

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図 GEの水事業部門
(各種資料よりエンヴィックス作成)

なおGEによる水処理事業の売却は、同社の石油・ガス事業とBaker Hughesとの統合を基盤とする事業再編計画の一環として実施される。水処理事業の売却を通じて、コアビジネスへリソースを集約化するとともに、売却で得た最大10億ドル(約1031億円)の利益を事業再編に要したコストの補填に充当する。両社は、事業統合を通じて、最近の石油価格の低迷に伴う事業停滞からの回復を狙う。GEが製造する新規の関連装置やIT・デジタル技術と、Baker Hughesが提供する従来型採掘機器やサービスを活用することで、石油・ガスの生産性の向上や顧客基盤の拡大を図る。GE石油・ガス事業とBaker Hughesの昨年の売上は320億ドル(約3兆2988億円)に匹敵し、355億ドル(約3兆6597億円)の売上を誇る大手競合事業者Schlumbergerへ迫る勢いとなる。統合後の新会社は、GEが62.5%、Baker Hughesが残り37.5%の所有権を保有する。

今回のGEの発表については以下の資料で詳細に述べられている。
http://www.ge.com/sites/default/files/ge_webcast_presentation_10312016_1.pdf

EnviXコメント

すでに世界中の多くのメディアでも報じられているように、GEの水ビジネス事業が売却される方向にある。売却先の企業としては様々な憶測が流れているが、例えば市場調査会社BlueTech ResearchのPaul O’Callaghan CEOは、米国のDanaher(ダナハー)を挙げている 。Danaherの環境事業グループには、2015年8月に買収した濾過・分離・浄水技術の世界大手のPall社をはじめ、工業排水処理用化学品のChemTreat社や、流量計測器のMcCrometer社などの水ビジネスに関連した企業がすでに存在しており、更なる事業強化を狙うものと推測されている。このほか、電子制御システムや自動化機器の製造販売をおこなっているHoneywell(ハネウェル)や、つい先日に自社のバルブ・制御事業部門の売却を発表したPentairを挙げている報道も見られる 。いずれにしても、10月末に発表された本件について、日本企業だけでなく、世界中の水ビジネス企業が注目していることは間違いない。引き続き関連動向を注視し、このエンヴィックス・水ビジネスジャーナルでも随時報告していく。

*1 http://www.waterworld.com/articles/wwi/2016/11/ge-s-water-sale-bets-on-danaher-as-the-new-buyer.html

*2 http://www.philly.com/philly/blogs/inq-phillydeals/GE-looks-to-sell-Trevose-water-business.html

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