2017年5月25日に現地で報じられたところによると、マレーシアに新たに建設された大型下水処理施設の開所セレモニーに出席した同国ナジブ首相が、民間企業各社に廃液・廃水を責任もって処理し、水資源を保護するよう強く促した。
今回首相が出席したのは、パンタイ第2下水処理プラント(P2STP)の開所式である。首相は、マレーシアには150もの河川に恵まれているが、天然資源を保護するためにはもっと多くの取り組みが必要だと語った。「マレーシアは水源に恵まれた国です。しかし、地球規模で進む気候変動と河川の水質汚染により、わが国も水不足の問題に直面しています。清浄な水を供給していくためには、全方位からのコミットメントを得てあらゆる種類の廃液と産業廃棄物を完全に処理し、水資源を保護することが必要です。河川の汚染をもたらす大きな要因は、農業・製造業からの産業廃棄物、家庭ごみなどです」
ナジブ首相はあわせて、「国家下水道戦略計画」の下、政府は2040年までに520億マレーシアリンギット(1兆3700億円)を投じ、77カ所の処理施設を建設すると述べた。「これまでに国内に処理プラントが46カ所建設されましたが、高容量で近代的なプラントは、処理する量が少ないと最適な動作条件が確保されません。このことから、下水道局が進めている、各工場と公共下水システムをつなぐ下水管整備事業を全面的にサポートするよう全国民に要請します」
ナジブ首相は、P2STPの実際のコストの90%を政府が支弁していることを明かし、これを「隠れたコスト」だと表現した。「国民は毎月2~8マレーシアリンギット(約52円~210円)を支払っています。しかし、実際の運用維持には国民1人当たり毎月20マレーシアリンギット(約530円)のコストがかかっています。政府は、下水道を維持運用するために23億700万マレーシアリンギット(約623億円)を支払っているのです」P2STPとパンタイ・エコパークの運用は、インダー・ウォーター・コンソーシアム社(Indah Water Konsortium)が担当していると語った。開所式には、天然資源環境省のWan Junaidi Tuanku Jaafar大臣、連邦領省のTengku Adnan Tengku Mansor大臣、統一マレー国民組織(UMNO)の地方事務所部署責任者Raja Nong Chik Raja Zainal Abidin氏も出席した。
17 haにわたって広がるP2STPは、180万人分の下水処理能力を持ち、最先端の環境技術を搭載した下水処理プラントである。地下式のプラントは同国初であり、またこの種のプラントとしてはアジア太平洋地域で最大級である。このうち12 haは、スポーツ・レクリエーション用施設を含むパンタイ・エコパークとして整備されている。
図 P2STPの地上の様子
(出典:P2STPのHP[1])
図 P2STPの地下構造
(出典:P2STPのHP)
EnviXコメント
マレーシア首相府・経済計画ユニットの発表によると、国内人口の6割以上が下水サービスに接続されており、全体の56%が公共処理システムによってカバーされている(下図)。
図 マレーシアにおける下水サービスの普及状況(2013年)
(出典:首相府経済計画ユニット、第11次マレーシア計画 戦略白書16[2]よりエンヴィックス作成)
地域毎の下水道のカバー状況については以下の通りで、プトラジャヤ、クアラルンプール、セランゴールなどの都市化や工業化が進む地域ほど高いことが分かる。いっぽうで、サラワク州、クランタン州、トレンガヌ州などは非常に低水準であり、国内平均の63%を大きく下回り、地域格差の大きさがうかがえる。
[1] http://epu.gov.my/sites/default/files/Strategy%20Paper%2016.pdf