オマーン、RO膜を使った淡水化の拡大を予測

2017年5月23日に報じられたところによると、オマーン国営電力・水公社 (OPWP:Oman Power and Water Procurement Company)が2023年における電力および海水淡水化による水供給の見通しに関するレポート「OPWP’s 7-Year Statement (2017-2023)[1]」を発表し、この中で淡水化の方式としてRO式の割合が高まっていくとの見通しが示された。

同レポートは、国内5箇所の給水ゾーンにおける水需要の拡大を示すとともに、現在進行中の調達案件やプラント建設の進行状況を概説する内容となっている。さらに、海水淡水化技術として、多段フラッシュ(MSF:Multi-Stage Flash)方式から逆浸透(RO)膜に移行していくと示した。同国には5つの給水ゾーンが存在するが、最も大きな基幹系統(MIS:Main Interconnected System)ゾーンの水需要について、同レポートは、今後年間5%の割合で増加し、2023年には110m3/に達すると予測している。また、Sharqiyahゾーンでは年率7%で増加し11万5000 m3/日に、Dhofarでは年率9%で増加し23万1000 m3/日に達すると予測されている。オマーンの5つの給水ゾーンはMIS、Sharqiyah、Musandam、Duqm、Dhofarである。

同レポートでまとめられているMISゾーンでの水需要量(ピーク時)の予測と、淡水化量の推移は下図の通りである。2017年は需要量が淡水化量を上回っているが、その後は淡水化量の方が多いという試算となっている。


図 MISゾーンにおける水需要量の予測と脱塩水量(予定)(単位:1000 m3/日)
(出典:OPWP’s 7-Year Statement (2017-2023))

OPWPは現在、コスト削減を目的として、新たなプラントを建築する際には発電プラントと淡水化プラントを併設することを検討するよう求められているという。従前、発電所に海水淡水化プラントを併設する場合、蒸発法を用いたプラントを建設するのが通例であった。しかし同レポートは、最近はこうしたプラント建設プロジェクトの入札において、MSFなどの蒸発法式よりもRO式が提案される事案が多くなっているとして、次のように説明する。「Salalah IWPPおよびBarka II IWPPの事例では、入札仕様においてRO式を指定しているわけでもないにも関わらず、入札者はMSFではなくRO式を提案した。OPWPは、将来的なプラントにはその経済的メリットからもRO式が採用されると予測する。OPWPは現在のところ、2022年時点では電力と淡水化の双方のニーズが存在すると考えており、プラントを共存させるメリットはあると見ている。2017年現在、建設用地とインフラ要件の評価作業が進行中である。」なお、同レポートはオマーンの2つの基幹電力システム(MISおよびDhofar Power System)の他、独立した電力供給システム(Ad DuqmおよびMusandam)についても言及している。MISでは、ピーク時の需要は年間6%の割合で増加し、2023年には8960 MWに達するという。

同レポートによれば、同国で進行中のプロジェクトはゾーンごとに以下のとおり。

基幹系統 (MIS) ゾーン

  • Qurayyat IWP:2017年に新規淡水化プラント 20万m3/日
  • Ghubrah IWPP: 2018年3月に淡水化プラントの操業終了
  • Barka IWPP:2021年まで契約を延長(10万2000 m3/日 RO式)
  • Barka IV IWP:2018年に新規淡水化プラント 28万1000 m3/日
  • Solar III IWP:2018年に新規淡水化プラント25万m3/日
  • Ghubrah III IWP:2022年に新規淡水化プラント 30万m3/日
  • North Batinah地域:2022年に新規淡水化プラント 20万m3/日
  • Solar IWPP: 2022年に契約終了

Sharqiyahゾーン

  • Sur II IWP:淡水化プラント拡大4万8000 m3/日、現在稼働中
  • Aseelah:2017年に淡水化プラント拡大、当面 1万m3/日
  • Aseelah IWP:2020年に新規淡水化プラント8万m3/日

Dhofarゾーン

  • Salalah III IWP:新規淡水化プラント10万m3/日 2017年に契約先決定、2020年に商業的運用開始
  • 3箇所目のIWPの候補地選定、2022年に操業開始の可能性

Ad Duqmゾーン

  • 電力・水庁 (PAEW) およびDuqm経済特区庁 (SEZAD) が現在地元のユーティリティMarafiqによる給水の提案を検討中
  • OPWPによるDuQm IWPの調達は保留中

Musandam給水ゾーン

  • OPWPがKhasab IWPの調達を開始、2021年に操業開始

[1] http://www.omanpwp.com/PDF/7%20Year%20Statement%20Issue%2011%20(2017-2023).pdf

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