米でPFOAの代替物質GenXが河川を汚染

米国で、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)の代替物質として使われているGenXという化学物質が一部の河川を汚染していることが懸念されている。PFOAはDuPontが調理器具のテフロン加工などの工程で使っていた物質で、健康被害を引き起こすおそれから数かずの訴訟が起こされ、現在ではPFOAの使用は全廃されている。


図 GenXの構造式
(出典:HYDROVIV社ホームページ)


図 PFOAの構造式
(出典:Wikipedia)

このPFOAの代替物質として開発されたGenXを使用しているのは、DuPontから分離独立したChemoursという会社である。同社はウェストバージニア州パーカーズバーグやノースカロライナ州ファイエットビルでフッ素樹脂などを製造しているが、パーカーズバーグ工場の近くを流れるオハイオ川でも、また、ファイエットビル工場の近くの河川からも、GenXが検出されている。2017年6月にこのことが報じられた際には、Chemoursの株価が暴落した。

EPAの対応

環境保護庁(EPA)は、PFOAの使用廃止を2006年にDuPontにうながし、それを同社が受け入れて、PFOAはGenXその他の新世代の有機フッ素化合物(PFAS)に置き換えられた。新世代のPFASはPFOAなどよりも速く人体から排出されるため、より安全であるとChemoursは主張している。

だが、GenXをめぐっては、Chemoursを相手取った新たな訴訟が起こされるとの観測がウォール・ストリートのアナリストらのあいだで出はじめており、EPAも2017年6月、この物質の毒性データを見直し、リスク評価を更新することを明らかにした。

高まる懸念

GenXについては、さまざまな方面から懸念の声があがっている。イーストカロライナ大学のJamie C. DeWitt准教授は、ファイエットビルやパーカーズバーグで検出されたGenXの濃度が安全なレベルであるかどうかについて、これまでよりも格段に踏み込んだ研究が必要であると述べている。また、ノースカロライナ州では、GenX汚染への懸念が一般住民の抗議行動にまで発展しており、地元の行政当局もその対策にとりかかっている。